「うちの子、本当に英語で授業受けられるのかな…?」 インターナショナルスクールへの入学を考えている親御さんの中には、そんな不安を抱いている方も少なくありません。特に、家庭内に英語環境がない場合や、これまで英語に触れてきた機会が限られていたお子さんにとって、すべてが英語で進行する授業や学校生活に適応することは簡単ではありません。
最近では、英語初心者でも受け入れてくれるインターナショナルスクールも増えてきました。とはいえ、入学後すぐに壁を感じて戸惑う子も多く、「行かせたはいいけれど、大丈夫かな…」と親御さん自身が心配になってしまうこともあります。
英語の壁とは、単に「話せない」「聞き取れない」といった言語スキルの問題だけでなく、自信の喪失や孤立感、文化的な違いに対する戸惑いなど、さまざまな要素が絡み合っている複雑なものです。
この記事では、その英語学習の壁にぶつかったときに、家庭としてどうサポートできるのか、どんな心構えを持てばよいのか、ステップに分けてじっくりと解説していきます。
入った後に感じる英語の壁とは

入学前には「子どもはすぐに慣れるから大丈夫ですよ」と言われたものの、いざ通い始めてみると、学校で話す量が激減したり、「今日何やったの?」と聞いても「わかんない」としか返ってこない…。そんな体験をした親御さんも多いのではないでしょうか。
これは、決して「子どもが努力していないから」ではありません。英語で進む授業や日常会話に晒されたとき、子どもたちはとてつもない集中力とエネルギーを使っています。頭の中では「理解したい」「話したい」という気持ちが渦巻いているにもかかわらず、言葉として表現する力が追いつかないのです。
特に最初の数ヶ月は、「話せない」よりも「話しかけられても返せない」「何を言ってるかわからないから黙ってしまう」というケースが非常に多く見られます。これは受け身型の沈黙とも言われ、心理的なストレスや不安感が根底にあることも多いのです。
ここで親御さんが意識したいことを、以下にまとめます:
- 無理に話させようとしない:言葉が出ないのは努力不足ではなく、過剰な刺激に脳が処理しきれない状態。
- 表に出ない頑張りを認める:「今日は頑張ったね」「よく聞いてたね」と、目に見えない努力に注目する。
- 安心できる時間を確保する:帰宅後は英語から離れる時間も必要。好きな遊びで気持ちをリセットさせる。
「わからない自分」を受け入れられるかどうかが分かれ道

インターナショナルスクールでは、失敗を恐れず発言する力が求められます。けれど、日本の文化的な背景では「間違えること=恥ずかしいこと」という意識が根強く、特に真面目な子ほど「変な英語を話したらどうしよう」と不安を感じ、発言を控えるようになります。
そんな子どもが少しずつ「挑戦できる自分」になっていくためには、家庭の中でわからない自分を肯定できる環境づくりがカギになります。
具体的なサポート方法をリストにまとめました:
- 親自身の失敗談を話す:「私も昔、英語で間違えて恥ずかしかったよ」などの話は、子どもにとって安心材料になります。
- 挑戦したことを褒める:「すごいね、その単語使ってみたんだ」「答えようとしたの、よかったよ」とチャレンジ自体にフォーカスする。
- 家庭内で間違える自由を保証する:「間違えても誰も笑わない」「うまく話せなくても全然OK」という空気をつくる。
家庭でできることばの土台づくりとは

英語力を高めたいと思うと、つい「教材を買わなきゃ」「英語塾に通わせよう」と思ってしまいがちですが、実はもっと大切なのは、家庭の中で“言葉と出会う体験”を増やすことです。インターナショナルスクールに通っているとはいえ、日々の英語シャワーを受け止め、しっかりと吸収するには「安心できる自分の言語環境」が必要です。特に家庭は、子どもにとって心のよりどころでもあるため、無理なく英語と触れられる空間にしていくことが大切です。
生活の中でできることばの土台づくりのアイデアを、以下にまとめました:
- 日常会話に英語を混ぜる習慣をつくる:たとえば、夕食の準備中に「これ英語でなんて言うんだろう?」と親子で一緒に調べてみる。辞書アプリやAI翻訳ツールを活用しながら、英語に対しての“探究心”を自然と育むことができます。
- 実況ごっこで体験的に言葉を使う:散歩中や家の中で「お皿を運んでいます」「赤い車が通ったよ」など、身の回りのことを英語で言ってみる遊びは、英語を“体験の一部”として記憶に残す効果があります。
- 英語の絵本やアニメを親子で一緒に楽しむ:意味がわからなくてもOK。絵や雰囲気でなんとなく楽しむことが、英語に対する抵抗感を減らします。お風呂あがりや寝る前のルーティンとして取り入れると、子どもも「英語=楽しい時間」と思えるようになります。
これらの活動を通して、英語を「特別なもの」ではなく、「生活の中で当たり前に存在することば」として捉えられるようになると、子どもの心の壁も自然と低くなっていきます。
親御さんのスタンスが子どもの安心感になる

「英語が苦手な親だから、サポートできない…」と不安になる方もいます。でも実は、完璧に教えられることよりも、そばにいて見守ってくれることのほうが、子どもにとっては大きな意味を持つのです。親の存在は安心感の土台となり、英語に挑戦する子どもの背中をそっと支えてくれるものです。
子どもの不安を和らげる、親御さんの具体的なスタンス例を紹介します:
- 「ともに歩む」姿勢を見せる:子どもが「難しい」と感じたときに、「じゃあ一緒に調べてみようか」と声をかけてみる。親の“知らないことに向き合う姿勢”は、子どもにとって最高のモデルになります。
- 過程を認める言葉かけを意識する:「今日はちゃんと学校行けたね」「返事はできなかったけど、聞こうとしてたよね」など、結果よりもプロセスに注目。子どもはその言葉に救われ、自信を取り戻していきます。
- 英語力ゼロの自分に自信を持つ:「わからないからサポートできない」ではなく、「わからないから一緒に歩ける」と考える。共に成長する姿勢こそが、家庭でできる最も力強いサポートです。
英語が得意でなくても問題ありません。むしろ、わからないからこそ寄り添える。その視点を持つことで、子どもは「この家に帰れば安心できる」と思えるようになります。
スクールとの連携が子どもの壁越えを後押しする

多くのインターナショナルスクールでは、英語が母語でない子どもへのサポート体制が整っています。けれど、それをうまく活用できていない家庭も少なくありません。学校任せではなく、家庭側からも積極的に関わっていくことで、子どもの成長がぐんと加速します。
家庭とスクールが連携するうえで意識しておきたいポイントを整理します:
- 家庭での様子を学校と共有する:「家では話さないけれど、何か変化ありましたか?」とフィードバックをもらう姿勢をもつ。日常の気づきが先生にとっても大きなヒントになります。
- サポート制度を遠慮せず利用する:補講やEALサポートがある場合は、積極的に相談することで子どもに合った支援が受けられる。英語のレベル別対応が整っているスクールも多くあります。
- 子どもに“見守られている実感”を与える:「先生とも話してみたよ」「学校でも気にかけてもらってるって」と伝えるだけでも、安心感につながります。親と学校がつながっていることを知るだけで、子どもは孤独感を手放せます。
スクールと家庭がチームとして動くことで、子どもが「安心して失敗できる場所」が広がります。失敗してもフォローがある、理解してくれる大人がいる。そんな環境が、英語の壁を乗り越える原動力になります。
インターナショナルスクールに通うことは、英語が話せるようになるための手段であると同時に、「ことばに向き合う経験」でもあります。
最初は戸惑い、沈黙し、自信をなくすこともあるかもしれません。でも、その一つひとつの壁を乗り越えるたびに、子どもたちは「ことばを通して人とつながる力」「自分を信じる力」を育てていきます。
親御さんができることは、全部を教えることではありません。 すぐに答えを出すことでもありません。
英語学習の壁は、やがて子ども自身の生きる力へと変わっていく。その未来を信じて、今日もそっと背中を押してあげてください。