子どものプレゼン力を育てる家庭の工夫とは?

基礎知識
こんな人向けの記事です
  • 子どものプレゼン力を鍛えたい!
  • どのように鍛えてあげればいいかな?

うちの子、家ではよく話すのに、学校だと急に黙っちゃうんです…」そんな声、最近よく聞きませんか?

家では元気いっぱいにしゃべっているのに、教室の前に立つと急に萎縮してしまう。それは決して“性格の問題”ではなく、現代の社会環境や教育の変化と深く関わっています。

SNSやオンラインでのやりとりが中心になりつつある現代。

人前で「自分の考えを伝える」機会は、実は昔よりも少なくなっています。それなのに、社会では「プレゼン力」や「表現力」がますます求められるようになってきました。

「うちの子、このままで大丈夫かな?」と感じている親御さんにとって、家庭でできるちょっとした工夫が、将来の大きな自信につながるかもしれません。

社会が変わると、育てたい力も変わる

昔は「聞き上手」が重宝されていた時代もありましたが、いまはそれに加えて「自分の意見を明確に伝える力」が必要不可欠になっています。OECD(経済協力開発機構)が提唱するキー・コンピテンシーや、日本の新学習指導要領においても、「思考・判断・表現」能力の育成が強調されています。

また、企業が新卒に求める力としても「論理的思考力」「コミュニケーション能力」「主体性」が上位に挙がっており、それはまさに“プレゼン力”に直結する要素です。

さらに、これからの時代はAIや自動化技術が進む中で、「人にしかできない力」として、プレゼンテーションや対話による価値創出の能力がより一層注目されています。自分の考えを伝え、共感を生み、相手の心を動かす力は、将来どんなフィールドでも通用するスキルです。

教育観のシフト:教えるから「引き出す」へ

近年の教育は、詰め込み型から“探究型”へとシフトしています。与えられた答えを覚えるのではなく、自分で問いを立て、調べ、考え、発表する。そんなプロセスが重視されるようになっています。

この変化は、子どもたちにとって表現力やプレゼン力が「学びの中心」にあることを意味します。言い換えれば、「話す力」は勉強の一部ではなく、“これからの学びを進めるエンジン”になっているのです。

学校でも、グループワークや意見交換の時間が増え、「自分の言葉で語る力」が当たり前に求められるようになっています。今後の大学入試や就職活動においても、「考えて話す力」が評価される傾向がますます強まるでしょう。

家庭でできるプレゼン力の土台づくり

ここでは家庭でどのように子どもにプレゼン力を鍛えていくか解説していきます。

日常での小さな会話が、将来の大きな武器になります。

たとえば、夕食の時間です。「今日どうだった?」と聞くだけではなく、「それってどう思った?」「どうしてそう感じたの?」と、子どもの意見を深掘りする会話を重ねていく。これだけでも、“自分の考えを言葉にする力”はぐんと育ちます。

・「何が一番楽しかった?」→「どうしてそれが楽しかったの?」

・「それはどんなふうにやったの?」→「工夫したところはどこだった?」

質問を工夫することで、子どもが自然と自分の頭で考え、話す練習ができるのです。

また、子どもが話したことに対して、親御さんが「へえ、そんなこと考えてたんだね」とリアクションを返すだけで、会話の循環が生まれます。子どもは「自分の話に興味を持ってもらえた」という喜びを感じ、さらに話そうという意欲につながります。

家庭の姿勢が、子どもの自信を支える

もうひとつ大切なのは、親御さんの“聞き方”です。子どもが一生懸命話そうとしているときに、「それ違うよ」と否定したり、「早く言って」と急かしたりしていませんか?

プレゼン力は「正しく話す力」ではなく、「伝えようとする姿勢」が育つことが第一歩。その芽を摘まずに見守ることが、家庭の大きな役割です。

・話の内容より「伝えようとしていること」を認める

・うまく言えなくても「聞いてるよ」と安心させる

・途中で言葉に詰まったら「大丈夫、ゆっくりでいいよ」と支える

これらの関わり方は、子どもが話すことに対して“恐れ”を感じなくなる土壌をつくります。

「プレゼンごっこ」で遊びながら育てる

少し慣れてきたら、「プレゼンごっこ」もおすすめです。 たとえば、お気に入りのおもちゃについて「このおもちゃのいいところを教えて!」とプレゼンしてもらう。家族が“観客”として聞いてあげることで、ちょっとした舞台に早変わり。

また、テーマを変えて「好きな食べ物ベスト3を発表してみよう」など、親も一緒に参加すると、家庭の中が学びの場に変わります。誰かに伝えるために整理して話すという習慣は、実際のプレゼンの場でも役に立ちます。

繰り返すことで、「話すって楽しい」「伝えるって気持ちいい」と感じられるようになります。ここまで来れば、学校での発表もぐんと自信がついてくるはずです。

外の教育環境と“いい距離感”で付き合う

どれだけ頑張っても、家庭でできることには限界があります。 そこで、最近注目されているのが、「プレゼン力」や「表現力」を重視したスクールやカリキュラムです。

たとえば、探究型学習を導入しているインターナショナルスクールや、自己表現に特化したプログラムを展開する民間のキッズスクール。ここでは子どもたちが自分の興味や意見をプレゼンしあう文化があり、“人前で話すことが日常”になっています。

「最近では、英語環境を整えたスクールも増えてきています」といった形で、こうした場も“選択肢のひとつ”として捉えると、親御さんの気持ちもラクになるかもしれません。

また、外部の教育機関では、プレゼンに必要な構成の立て方や、聞き手の視点を意識した話し方なども学ぶことができます。家庭では教えづらいテクニック的な要素をカバーしてくれるのも大きな利点です。

外の学び × 家庭のサポート = 最強の育成環境

とはいえ、外部の教育だけに任せるのではなく、「家庭との連携」があってこそ効果が大きくなります。スクールで学んだことを家で聞いてあげる、家庭で出た話題をスクールで発表してみる——そんな循環が、子どもの“実感”と“自信”をどんどん膨らませていきます。

また、外部環境でうまくいかなかった時も、家庭が安心できる場所であれば「また頑張ってみよう」と思えるもの。家庭とスクール、それぞれの役割を“支え合い”として捉えると、より健やかなプレゼン力の育成が期待できます。

これからの社会で、「話す力」はただの“スキル”ではなく、“生きる力”そのものになっていきます。将来、どんな仕事に就くにしても、自分の意見を伝え、人と協働する力は必要です。

その基礎は、決して特別な場所で育つわけではありません。毎日の家庭での会話、ちょっとした聞き方の工夫、安心して失敗できる環境——そんな積み重ねが、子どもの未来を大きく変えていきます。

「うちの子、人前で話すの苦手かも…」そう思ったそのときが、スタートのタイミングです。焦らなくても大丈夫。親御さんの温かなまなざしと、小さな一歩が、きっと子どもの自信につながります。

プレゼン力とは、“うまく話す力”ではなく、“伝えようとする力”。その一歩を、今日から家庭で始めてみませんか?