世界に通用するアート思考とは?子どもの創造力を引き出す教育法

基礎知識
こんな人向けの記事です
  • 子どもにアート思考を身につけさせたい!
  • 教育するにあたって大切にするポイントはどこだろう?

「うちの子、アイデアはたくさんあるのに、どう形にしていいか分からないみたいで、、」 「個性を伸ばしてあげたいけど、何から始めたらいいのか不安」

そんなふうに感じたことがある親御さんは少なくないはずです。

今の社会は、決まった答えを出す力よりも、「自分の視点で世界をとらえ、何かを生み出す力」が求められています。その中で、世界中の教育現場や企業で注目されているのが「アート思考(Art Thinking)」です。

アート思考は、芸術のように“問い”から始まり、答えのないものを自分なりに表現していくプロセス。つまり、自分の内側から湧き出る発想を大切にし、常識やルールにとらわれずに考える力です。

一見抽象的に思えるこの力こそ、子どもがこれからの社会をしなやかに生き抜くための土台になっていきます。

なぜ今、子どもに“アート思考”が必要なのか?

社会は今、正解が一つではない時代に突入しています。

デジタル技術やAIが進化する中で、人間に求められるのは「感性」や「創造力」、そして「他者と違う視点」です。OECDの2030年教育ビジョンでも、「創造性」や「新しい価値を生み出す力」が今後の鍵を握る能力として明記されました。

また、日本の学習指導要領にも「主体的・対話的で深い学び」が導入され、子どもたちが自分の問いを立て、自ら考え、他者と対話しながら学ぶことが推奨されています。これはまさに、アート思考が前提とするプロセスを楽しむ姿勢と重なります。

アート思考は、失敗を否定しません。正解がないからこそ、自由に考えることができる。そしてその自由さの中から、新しい視点やアイデアが生まれてくるのです。

子どもにとってのアートとは?

子どもにとって、アート思考は「自分って何だろう?」を探る旅でもあります。

自分の感情や考えを言葉だけでなく、形や色や音で表現していく中で、「伝え方」「見せ方」「問いの立て方」を学びます。それは他人と違っていていいし、むしろ“違い”こそが価値になる。

この「違いを楽しむ感覚」や「自由に考える姿勢」は、グローバルな社会で生きていく上での重要な素養になります。

家庭でできるアート思考の育て方

ここでは家庭でできるアート思考の育て方について大事なポイントを解説していきます。

  • 「なんでそう思ったの?」と問い返してみる
  • 正解よりも「らしさ」を大切にする
  • 余白を与える。「ヒマな時間」も立派な学び

それぞれ解説します。

「なんでそう思ったの?」と問い返してみる

日常の中で子どもがふとした意見や発想を話したとき、それを「すごいね!」で終わらせずに、「どうしてそう考えたの?」と聞いてみてください。

この問い返しは、子どもの思考を“見える化”し、自分の中で発想の筋道を立てる手助けになります。アート思考では、この問いの解像度を高めることがとても重要です。

子どもが「このお皿、空みたい!」と言ったら、「どうしてそう思った?」と返してみましょう。

色?かたち?気分?そこには、子どもなりの世界観があります。それを否定せず、広げてあげることが、創造力の原点になるのです。

正解よりも「らしさ」を大切にする

アート思考では、「正しいか間違っているか」よりも、「その子らしいかどうか」に重きが置かれます。

たとえば絵を描いたとき、「上手だね」ではなく「どんな気持ちで描いたの?」と聞いてみる。工作で形が崩れてしまっても、「こうなったのも面白いね」と肯定的に受け取る。

こうした関わり方が、「自分の感性を信じていいんだ」という安心感につながり、挑戦を恐れず表現する力を育てていきます。

余白を与える。「ヒマな時間」も立派な学び

忙しい日々の中で、子どもを予定づめにしていませんか?

アート思考を育てるには、何もしない時間も実はとても大切です。退屈から生まれる遊びや発想、そこにこそ本来の「創造」があります。

「なんとなく描いてみた」「意味はないけど作ってみた」

そんな衝動的な表現を受け止め、面白がる大人の存在が、アート思考の育成において不可欠です。

探究型や表現教育を重視するスクールも登場

最近では、アート思考を育てることに力を入れるスクールも増えてきています。

たとえば、インターナショナルスクールでは、アートやデザインの授業を通じて「問いを立ててから表現する」プロジェクト型学習が導入されています。ある学校では、小学生が地域の課題をテーマにアート作品を制作し、発表する場を設けるなど、“思考と表現”をつなげる取り組みがなされています。

また、探究型カリキュラムを持つ学校では、「失敗しても意味がある」という姿勢が浸透しており、子どもが自由に試行錯誤する過程を大切にしています。

最近では、英語環境を整えたスクールやSTEAM教育を取り入れる施設でも、「アート思考」というキーワードが使われ始めています。

家庭と教育の感性の循環を意識する

家庭で感じたことをスクールで形にし、スクールで経験したことを家庭で共有する。そんな循環が、子どもの表現力を深く支えてくれます。

子どもが学校で作った作品を見ながら、「どんな思いが込められてるの?」と聞いたり、家庭で描いた絵や発想を「先生に聞いてみたら?」と促すのも良い流れです。

教育と家庭が感性をつなぐ“共創の場”になったとき、子どもの中に自然と「表現って楽しい」という感覚が育まれていきます。

アート思考は、未来の社会でますます必要になる「しなやかな創造力」を育てる考え方です。

それは、アートを職業にするための教育ではありません。自分らしく問い、自分らしく表現し、自分らしく世界と関わっていくための“土台”なのです。

「うちの子、ちょっと変わってるかも…」と思ったときこそ、それはアート思考の芽かもしれません。その芽をつぶさず、育てる環境づくりは、日々の家庭の関わりから始められます。

今日の「どうしてこうなったんだろう?」が、未来の「新しい価値を生み出す力」につながっていく。

アート思考は、子どもにとっての“自分の軸”を見つけるプロセス。その第一歩を、ぜひ家庭の中で一緒に歩んでみてください。