「どうして雨が降るの?」「なんで片づけなきゃいけないの?」
毎日の中で、子どもから投げかけられる“なんで?”の嵐。丁寧に答えようとしても、つい「いいからそうして」と言ってしまう。そんな経験、ありませんか?
けれど、この“なんで?”こそが、論理的思考=ロジカルシンキングの芽なんです。言葉の意味を理解し、順序立てて考える力は、いま幼児期の教育現場でも注目されているスキルのひとつです。
将来、AIや自動化が進む社会において、子どもが自分の頭で考え、他人にわかりやすく伝える力はますます求められていくはず。だからこそ、「小さいうちから無理なく育てていく」ことが、これからの子育てにおいて大切な視点になってきています。
ロジカルシンキングが求められる時代背景とは

かつては「正解のある問題に、素早く答える力」が評価されてきました。しかし今、社会で必要とされるのは、「答えのない問いに向き合う力」「情報を整理して、自分の考えを持つ力」へと移り変わりつつあります。
たとえば、STEAM教育の導入やアクティブラーニングの普及により、子どもが“問いを立てる”側になる教育が重視されてきました。これらはすべて、「筋道を立てて考える力=ロジカルシンキング」がベースにあります。
さらに、小学校入学前から“考えることの習慣”を育てることで、学びの吸収力やコミュニケーション力にも好影響を与えるとされ、非認知能力の一部としても注目されています。
2020年以降の学習指導要領では、小学校でも「論理的な思考力の育成」が盛り込まれるようになりました。国語では“理由を添えて自分の考えを書く”活動が増え、算数でも“なぜその式になるのか”を説明させる場面が定番になっています。
つまり、論理的に考え、言語化する力はもはや“学力の一部”になりつつあるのです。さらに中学・高校の探究型授業やディスカッション形式の授業でも、「筋道を立てて話す力」は重視されています。
こうした教育の流れを理解することで、「なぜ今、ロジカルシンキングが注目されているのか」という背景が見えてきます。
家庭でできる“ロジカルシンキング”の育て方

子どもとの会話に「5W1H(いつ・どこで・だれが・なにを・なぜ・どうやって)」を意識して取り入れてみましょう。
たとえば、「今日なにして遊んだの?」「だれと?」「どうやって?」と質問を重ねていくと、子どもは自然に「話の順序」や「必要な情報の整理」の感覚を身につけていきます。
この“対話の型”を日常的に経験しておくことで、自分の考えを相手に伝える際にも「筋道を立てて話す」意識が育ちます。
答えが1つじゃない問いを楽しむ
ロジカルシンキングは“正解を出す力”と思われがちですが、実際には「複数の選択肢を整理し、理由を考える力」も同じくらい大切です。
たとえば、「ケーキとプリン、どっちを先に食べたい?」と聞いて、「どうして?」と理由を聞いてみると、子どもは感情と理屈を行き来しながら、自分の考えを形にしようとします。
この“どっちもアリ”の問いに向き合うことが、柔軟で構造的な思考を育てる入り口になります。
「どうしてそう思ったの?」で深掘る関わり方
子どもが何かを話したとき、「そうなんだ」で終わらずに、「なんでそう思ったの?」ともう一歩聞いてみることで、思考の深掘りが始まります。
この問いかけは、子ども自身が自分の考えを振り返る機会になり、論理的な思考回路を少しずつ形作っていくのです。
もちろん毎回深掘りする必要はありません。「今日はちょっとだけ聞いてみよう」くらいのスタンスで大丈夫。親御さん自身が、会話の中で“考える余白”を意識するだけで、子どもの頭の中にも自然と余白が生まれます。
考える力を育てる教育スタイルとは?

論理的思考力は、探究型カリキュラムやSTEM(科学・技術・工学・数学)教育とも非常に相性が良いとされています。
たとえば、あるインターナショナルスクールでは、「課題に対して自分の仮説を立て、資料を集め、検証して発表する」プロセスを子どもたちが日常的に経験しています。この流れ自体が、ロジカルシンキングそのものなのです。
「なぜそう考えたのか」「どうしてその方法を選んだのか」。
このように、論理構造を持って話す経験を積むことで、思考の枠組みが強化されていきます。
外部環境で得られた思考スタイルは、家庭での対話によってさらに深まります。
たとえば、探究学習で得た知見を「今日はどんなこと考えたの?」と家で聞いてみるだけで、子どもは自分の考えを整理し、もう一度言語化する力を養います。
また、スクールでのディスカッションやグループ活動で身についた他人の考えを聞く姿勢も、家庭の中で「親の考えを聞いてみる」体験とつながることで、共感力や論理性が両立した思考に育っていきます。
論理的思考は、決して特別な教材や難しい訓練で育つものではありません。
「なぜ?」「どうして?」「どう思う?」という、日々の小さな問いかけの中に、その種はたくさん転がっています。
「すぐに答えが出ないこと」も、「一緒に考えること」も、大切な“ロジカルシンキング”の時間です。
そして、親御さん自身も「完璧に答えなければ」と思い詰めなくて大丈夫。
「わからないけど、一緒に考えてみようか」。その姿勢こそが、子どもにとっての教材になります。