ここ数年、中学受験の中で「英語」を試験科目に加える学校が増えてきました。
「うちの子は国語は得意だけど、英語となると…」と不安を感じている親御さんも多いのではないでしょうか。
ですが実は、英語受験においてもこれまで積み重ねてきた“国語力”が大きな武器になる場面が少なくありません。
読解力、語彙力、論理の構造をとらえる力、、。
これらは英語でも求められる力であり、国語と英語は思っている以上に“通じ合っている”科目なのです。
この記事では、国語と英語の共通点に注目しながら、英語受験に向けて今できることを具体的に紹介していきます。
英語受験が広がる背景と求められる力の変化

私立中学では、英語を入試に取り入れる学校が年々増えています。
たとえば、広尾学園、かえつ有明、三田国際などは早くから英語入試を導入し、現在では開智や栄東などの進学校でも採用が進んでいます。
こうした学校で出題される英語の問題は、必ずしも“英会話ができる”ことを前提にしているわけではありません。
むしろ多くの場合、「英文を読んで内容を理解する」「語彙の使い方を把握する」「文の構造を読み解く」といった、“読解力”と“語彙感覚”が重視されているのです。
つまり、「話す力」よりも「読む力・考える力」が試されるという点では、英語もまた国語と共通する部分が大きいといえるでしょう。
語彙の広がりは母語にも第二言語にも効く
英語力というと、「英単語をたくさん覚えなければならない」と思いがちですが、
重要なのは“単語数の多さ”ではなく、“語彙感覚の広がり”です。
たとえば、「bright」という単語を習ったとき。
国語で「明るい」「鮮やか」「輝く」といった日本語の語感を理解していれば、
その英単語が持つ意味の広がりも自然に捉えることができるようになります。
国語で語彙を豊かに育ててきた子どもほど、英単語の理解も速く、文脈に応じたニュアンスを読み取る力が強い傾向があります。
また、「言葉には意味の中心と、その周辺に広がる使い方がある」という感覚は、英語でも非常に役立つもの。
語彙は母語と第二言語の両方に作用する、“学びの共通土台”といえるでしょう。
読解のカギは“構造を読む力”にある
「英語の文章を読むのが苦手」というお子さんに共通する特徴のひとつが、構造をつかむ力の弱さです。
文中に知らない単語が出てきたときでも、「この文の主語は?」「何について書いている?」といった構造に注目できれば、内容の大枠をとらえることは十分可能です。
これは国語の読解力でも同じ。
筆者の主張や文の展開、接続詞の意味などを手がかりに、“文の流れ”をとらえる訓練をしてきた子ほど、英語長文への適応力も高い傾向があります。
英語受験で求められる力とは、単語を全部訳すことではありません。
「この文章は、なにを伝えようとしているのか?」という“全体の構造”を読む力が、最も重要だといえるでしょう。
家庭でできる、国語力を活かした英語対策

では、これまでに育ててきた国語力を、どのように英語学習に活かしていけばよいのでしょうか?
ここでは、すぐに家庭で取り組める工夫をいくつか紹介します。
- 英語絵本は「読み聞かせ+感想のシェア」で深まる
- 簡単な英語日記や作文で“使う”を意識する
- 親の声かけが“言語スイッチ”をつくる
- ことばを考える環境”づくりも大切
それぞれ解説します。
英語絵本は「読み聞かせ+感想のシェア」で深まる
内容の意味がすべてわからなくてもOK。
英語のリズムや音にふれながら、「どういう場面なんだろう?」「なんでこの絵なんだろう?」といった問いかけを通して文脈を考える習慣を育てます。
読み終えたあとには、
- 「どんな話だった?」
- 「主人公はどんな気持ちだった?」
など、日本語で感想を聞くのも立派な読解練習です。
簡単な英語日記や作文で“使う”を意識する
身近なことを英語で表現してみる練習は、表現力と文法力の両方を育てるのに役立ちます。
いきなり完璧を目指さず、たとえば「今日の楽しかったこと」を一文だけ英語で書く、
または、「日本語で3行」→「それを英語に直す」練習から始めてもOKです。
親の声かけが“言語スイッチ”をつくる
- 「あ、それ英語で何て言うんだろうね?」
- 「この場面、英語だとどう説明する?」
そんなふとした声かけが、英語と国語の“橋”をつくってくれます。
間違いを正すよりも、できた部分を具体的に褒めること。
「I like curryってちゃんと気持ち伝えられてるね!」と、自信を育てる関わりが大切です。
ことばを考える環境”づくりも大切
英語と国語の両方にふれられる環境としては、
- 英語と日本語の絵本をリビングに置く
- 親子で“言葉の意味”を一緒に調べる
- 英語の動画を見たあと、「どんな話だった?」と日本語で聞く
こうした環境は、“ことばで世界を見る”力を育てる日常の仕掛けになります。
今後ますます広がる「英語受験」への備え方

私立中学の中でも、今後ますます「英語を活用した入試」は増えていくと予想されています。
すでに一部では“英語で探究活動を行う”ような出題形式も始まりつつあり、単なる語学力ではなく“英語で考える力”が問われる時代へと変化しています。
そのとき、必要になるのは
単語力でも、文法知識でもなく、「自分の考えを整理し、伝える力」です。
これはまさに、国語を通じて育ててきた力にほかなりません。
最近では、探究型の学びを英語で行うカリキュラムや、日常の中に英語を取り入れた私立校、インターナショナルスクールなども増えています。
環境面から“考える力”と“ことばの力”を同時に伸ばせる場として、そういった選択肢も視野に入れてみてもよいかもしれません。
英語受験が広がりを見せる中、不安を感じるのは当然です。
でも、これまで親御さんが支えてきた国語の力――
読んできた本、語り合ってきた言葉、書いてきた感想文……。それらは、英語でも必ず活きてくる“学びの土台”です。
まずはその“貯金”を信じて、小さな一歩を踏み出してみてください。
そして、もし「より実践的な環境で英語にふれてほしい」と感じたら、英語に親しめる教室や探究型のカリキュラムを取り入れた学校も、選択肢の一つです。
焦らず、でも着実に。ことばの力は、親子の歩みとともに育っていきます。