私立中学の入試に「英語」を取り入れる学校が増えてきています。
かえつ有明、広尾学園、三田国際学園など、グローバル教育を重視する学校を中心に、英語が入試の一科目として定着しつつあります。
けれど実際、「塾に任せておけば大丈夫なのかな」「でもまだ小学生だし、家庭で何をしたらいいかわからない」
そんな不安や迷いを抱えている親御さんも少なくありません。
実は、英語受験において差がつくのは、塾の勉強時間そのものより、家庭での“ことばの育て方”だったりします。
この記事では、英語を入試科目とする中学を志望するお子さんに向けて、 家庭でできる英語学習の工夫、塾では補いきれない“思考と表現の力”の育て方を、3つのアプローチに分けてご紹介します。
1.インプットの質を変える:「読む・聞く」を“受け身”から“対話”へ

まず最初に見直したいのが、家庭での「インプットの質」です。
「英語にたくさんふれさせればいい」と言っても、ただ英語の音を流しているだけでは定着しません。
ポイントは、“受け身”のインプットから、“意味を考えるインプット”へ切り替えることです。
- 英語絵本を使った「意味ある多読」
- アニメや動画も“問いかけ型”で
英語絵本を使った「意味ある多読」
英語の絵本は、語彙も構文もシンプルで、かつ繰り返しのフレーズが多いため、初期のインプットに最適です。
ただし、ただ読ませるだけではもったいないです。
親御さんが隣に座って、
「この子、何してると思う?」
「次、どうなると思う?」と声をかけてみてください。
そうすることで、「ことばとストーリーを結びつける力」が自然に育っていきます。
アニメや動画も“問いかけ型”で
英語のアニメや動画を見せるのも有効ですが、ここでも“対話”がカギ。
たとえば『Peppa Pig』や『Bluey』などの短いストーリーを見たあと、
「何が面白かった?」「好きなキャラクターは?」と聞いてみましょう。
英語で返答させなくてもOKです。日本語でもいいので“考えて答える”経験が、後の英語表現の土台になります。
2.アウトプットの場をつくる:「話す・書く」を日常に取り入れる

英語受験で重要視されるのが、“自分のことばで英語を使えるかどうか”。
多くの学校で出題される英語の記述問題や意見文は、「読むだけ・聞くだけ」では対応が難しいものです。
だからこそ、日常の中でアウトプットを積み重ねておくことが鍵になります。
「英語で言ってみよう」を習慣にする
おすすめは、朝や夜などの短い時間に、「今日の出来事を英語でひとこと言ってみよう」という習慣です。
例)
- I played soccer.
- It was fun.
- I ate curry. It was good.
難しい表現でなくてOK。「自分のことばで伝えようとする力」こそが、英語受験の軸になります。
書く習慣は“日記+感想”から
日記や感想文も、立派な英語対策になります。
日本語で書いたものを、英語で1行だけでも言い換えてみる練習をしてみましょう。
- 「今日は楽しかった」→ It was a fun day.
- 「新しい友だちができた」→ I made a new friend.
“書く前に話す→話したことを一言書いてみる”という流れも効果的です。
「正しさ」よりも「伝えたい気持ち」を大事に
この時期の子どもにとっては、文法やスペルの正しさよりも、
「英語で言ってみよう」「伝わった!」という成功体験が何よりの学びになります。
親御さんが「あ、それいい表現だね!」と声をかけることが、自信と継続の源になるんです。
3.ことばで考える”を支える:「国語力」とのリンクを意識する

英語受験の記述問題や読解問題では、「英語ができる」だけでは通用しません。
実は、国語で育ててきた“読んで考え、表現する力”が、そのまま英語力にもつながるのです。
- 英語で求められるのは、論理と構成
- 読書や感想文が“英語の土台”にもなる
- 家庭内での「なぜ?」「どう思った?」を増やす
英語で求められるのは、論理と構成
たとえば「自分の意見を書きなさい」という問題に対して、
- 主張(I think…)
- 理由(Because…)
- 具体例(For example…)
という構成で答える力が求められます。これはまさに、国語で学ぶ作文・記述の力と同じ構造。
英語でも「なぜそう思うのか」「どう説明すれば伝わるのか」という視点をもつことが重要です。
読書や感想文が“英語の土台”にもなる
日々の読書や読書感想文は、英語学習にとっても非常に大切です。
- 「どこが心に残った?」
- 「この子の気持ち、どう思う?」
といった対話を通じて、“自分の視点を持って言語化する”練習になります。
この経験が、英語でも自分の意見を書く力を育ててくれるのです。
家庭内での「なぜ?」「どう思った?」を増やす
日々の会話の中で、ぜひ「なぜそう思ったの?」と問いかけてみてください。
- 「宿題やりたくなかったの?どうして?」
- 「このアニメ、なんで面白いと思ったの?」
こうした問いかけは、英語でも国語でも“思考をことばにする力”を鍛える最高のトレーニングになります。
塾では補いきれない“学びの深さ”は家庭にある

英語が受験科目に入ることで、どうしても「早く対策しなきゃ」と焦る気持ちが生まれます。
でも大切なのは、“今どれだけ英語ができるか”ではなく、“ことばを使って考える土台があるか”なんです。
塾でできることには限りがあります。
逆に、家庭だからこそ育てられる力もたくさんあります。
たとえば、
- ちょっとした対話で、読解力や意見表現の力が伸びる
- 「楽しい」「言いたい」と思える経験が、記述やスピーキングにつながる
- 親御さんの声かけひとつで、子どもの言語に対する姿勢が前向きになる
最近では、英語にふれる環境を整えたスクールや、探究型・表現重視のカリキュラムを導入する学校も増えており、
中学受験においても、“英語を手段として学びを深める力”を大切にする学校選びが主流になってきています。
焦らず、今できることをコツコツと。
“英語を学ぶ”ことより、“ことばを育てる”家庭時間を大切にしていきましょう。