「転勤や転校で途中退学したら、残りの学費は返金される?」
「契約書に同意すると、学校の判断にはすべて従わなければならない?」
インターナショナルスクールへの合格後は、Enrollment AgreementやParent Contractなどの書類への署名を求められることがあります。
しかし、実際の入学条件が1枚の契約書だけにまとまっているとは限りません。
学校によっては、入学申込書への署名によって、Fee Schedule、Financial Regulations、Admissions Handbook、Parent Handbook、Code of Conduct、Privacy Policyなどにも同意したものとして扱われます。
そのため、署名欄のある書類だけを読んで手続きを進めるのはおすすめできません。
この記事では、インターナショナルスクールの入学契約で確認したい12項目と、学校ごとに違いが出やすいポイントを解説します。
※本記事は一般的な確認ポイントを紹介するもので、個別の契約に対する法律上の判断を行うものではありません。
入学契約書は「関連書類一式」で確認する
最初に、学校から受け取った書類を一か所に集めましょう。
確認したいのは、主に次の資料です。
- Enrollment Agreement
- Offer Letter
- Admissions Handbook
- Fee Schedule
- Financial Regulations
- Parent and Student Handbook
- Withdrawal Policy
- Refund Policy
- Code of Conduct
- Academic Integrity Policy
- Privacy Policy
- Photo・Media Consent Form
- Medical・Emergency Consent Form
K. International School Tokyoでは、Admissions Handbookの中に出願資格、支払い方法、遅延手数料、返金などの項目が分けて掲載されています。IBも、学校へ苦情申立てや異議申立ての手続きを保護者へ伝えるよう求めています。契約書だけではなく、参照先として指定された規定まで読むことが重要です。
入学前に確認すべき12項目
1.誰が契約者・支払責任者になるのか
まず確認したいのが、契約上の保護者と支払責任者です。
会社が学費を負担する家庭でも、保護者本人が支払義務を負う契約になっている場合があります。
The British School in Tokyoでは、会社などの第三者が学費を支払う場合でも、請求期限までに支払う責任は保護者に残ると案内しています。
次の点を確認しましょう。
- 両親のどちらが署名するのか
- 連帯して支払い責任を負うのか
- 会社払いが終了した場合は誰が支払うのか
- 保護者の離婚や転居時に契約者を変更できるか
2.学費に何が含まれ、何が含まれないのか
年間授業料だけを見て契約すると、入学後の追加費用に驚くことがあります。
特に確認したいのは、次の項目です。
- 教材・教科書
- 端末やソフトウェア
- 校外学習・宿泊行事
- 給食
- スクールバス
- 制服
- 試験料
- 部活動・課外活動
- 英語サポート
- 特別支援教育
- 卒業関連費用
BSTでは、基本的な教材やカリキュラム上の行事を授業料に含める一方、給食、任意参加の旅行、SENサポート、一部の試験料や課外活動は含まれないとしています。
学校比較では授業料だけでなく、家庭に必要なサービスを含めた年間総額で比べましょう。
3.支払期限・分割払い・遅延時の扱い
契約書には、請求書の発行時期と支払期限が記載されています。
確認する項目は次のとおりです。
- 年払い・学期払い・分割払いの選択
- 分割手数料
- 振込手数料の負担者
- 支払い期限
- 遅延手数料
- 未払い時の督促方法
- 支払猶予制度の有無
ASIJでは、個人負担の家庭が分割払いについて会計担当へ相談できると案内しています。一方、BSTでは、事情が大きく変化した在校生について、支払い延期を個別に検討する制度があります。
分割払いが可能でも、自動的に適用されるとは限りません。申し込み期限も確認しましょう。
4.学費が値上げされる条件
現在の学費を支払えるかだけでなく、翌年度以降の値上げも考える必要があります。
契約書やFee Scheduleに、次のような表現がないか確認してください。
- Fees are reviewed annually.
- Fees are subject to change.
- The school reserves the right to adjust fees.
- Additional charges may be introduced.
BSTは、学費を毎年見直し、変更する場合があると明記しています。
兄弟で長期間通わせる家庭は、現在の金額を卒業まで固定して試算せず、一定の値上がりを想定して資金計画を立てましょう。
5.返金されない費用はどれか
Application Fee、Enrollment Fee、Registration Fee、Building Feeなどは、授業開始前に辞退しても返金されない場合があります。
ASIJでは出願料、登録料、校舎維持関連費などを返金不可としています。KISTもApplication FeeとEnrollment Feeは返金不可ですが、初登校日前にメールで辞退した場合、授業料や一定の一般費用は全額返金するとしています。
「デポジット」という名称でも返金されるとは限りません。
次の3つを区別してください。
- 返金される保証金
- 授業料に充当される前払金
- 座席確保のための返金不可費用
6.入学前に辞退した場合の返金条件
入学前のキャンセルでも、連絡した日によって返金額が変わります。
NISでは、入学開始日の14日より前に辞退を伝えた場合、年間授業料の全額返金対象となります。一方、開始日以降は学期単位で扱われ、途中まで在籍した学期については返金されません。
確認したいのは、次の境界日です。
- 契約書へ署名した日
- 請求書を支払った日
- Enrollment Start Date
- First Day of School
- 学期開始日
- オリエンテーション参加日
「授業をまだ受けていない」と思っていても、契約上は在籍開始後と扱われる可能性があります。
7.途中退学の通知期限と返金単位
途中退学では、最終登校日よりも、学校が正式な通知を受け取った日が重要です。
BSTでは、退学時に1学期以上前の書面通知を求めており、通知期間を満たさない場合は、1学期分の費用を支払う規定があります。ASIJでは、所定の期限までに書面で通知した場合、まったく在籍しないQuarterの授業料とバス代が返金対象です。
YISでは授業料は原則返金されず、在籍が学期開始後5日未満の場合などに例外が設けられています。
比較すべきなのは、返金の有無だけではありません。
| 確認項目 | 学校による違い |
|---|---|
| 通知期限 | 数週間前・1学期前など |
| 通知方法 | メール・専用フォーム・書面 |
| 返金単位 | 日割り・月・Quarter・Semester |
| 返金対象 | 授業料のみ・バス代を含むなど |
| 例外条件 | 転勤・病気・国外転居など |
8.学費未納で何が制限されるのか
未納時に遅延手数料が発生するだけとは限りません。
学校によっては、次の措置が規定されています。
- 登校停止
- 次年度の座席を確保しない
- 成績表を発行しない
- Transcriptや在籍記録を渡さない
- 卒業証明書を保留する
- 契約を解除する
ASIJとBSTは、学費が未納の場合、登校や成績・記録の発行を制限する可能性を明記しています。
支払いが難しくなりそうな場合は、期限を過ぎてからではなく、早い段階で会計担当へ相談しましょう。
9.入学後も在籍を継続できる条件
合格したからといって、卒業までの在籍が無条件に保証されるとは限りません。
学校によっては、次の条件を継続入学の前提としています。
- 学習面で一定の進歩がある
- 英語でカリキュラムへ参加できる
- 必要な支援を家庭が受け入れる
- 保護者が学校方針へ協力する
- 毎年Re-enrollment手続きを行う
NISは、入学後も学習面・社会面・情緒面の進歩を定期的に確認すると案内しています。また、必要な支援があってもカリキュラムへ十分に参加できないと判断された志願者には、出願の取り下げを求める場合があります。
英語サポートや特別支援が必要な子どもは、「入学できるか」だけでなく、支援内容、追加料金、継続条件まで確認してください。
10.停学・退学処分になる行為
契約書やStudent Handbookには、学校が停学・退学を判断できる条件が記載されています。
一般的に確認したい項目は、次のとおりです。
- 暴力やいじめ
- 差別的な言動
- 薬物・危険物
- 試験中の不正
- 盗用や生成AIの不適切利用
- 学校設備への損害
- SNS上の問題行動
- 保護者による重大な規約違反
IBでは、各校がAcademic Integrity Policyを定め、保護者や生徒へルールと手続きを伝えることが求められています。IB評価で不正が認定された場合、再提出が認められず、その科目の成績が得られないこともあります。
処分内容だけでなく、事実確認、保護者への通知、異議申立ての手順も読みましょう。
11.写真・動画・個人情報の利用範囲
入学時には、子どもの写真や動画を学校が利用することへの同意を求められる場合があります。
確認する利用先は次のとおりです。
- 学校Webサイト
- SNS
- パンフレット
- 広告
- 校内ポータル
- オンライン授業
- 外部の教育アプリ
- 学校行事のライブ配信
「学校活動の記録には同意するが、広告や公開SNSには同意しない」など、利用先ごとに選択できるか確認しましょう。
個人情報には氏名や住所だけでなく、本人を識別できる顔写真なども含まれます。学校がどのサービスへ情報を提供し、退学後にいつ削除するかも確認したいポイントです。
12.苦情・異議申立て・準拠する規則
最後に確認したいのが、学校の判断に納得できないときの手続きです。
- 最初に誰へ相談するか
- 校長・理事会へ進む手順
- 書面提出の期限
- 成績や処分への異議申立て
- 外部機関へ相談できるか
- 契約書の正文は英語か日本語か
- 解釈が異なる場合にどちらが優先されるか
IBは認定校に対し、学校の決定に関する苦情や異議申立ての手続きを保護者へ知らせることを求めています。
日本語訳が付いていても、「英語版を正式な契約文とする」と書かれている場合があります。意味が曖昧な条項は、署名前にメールで質問し、回答を記録として残しましょう。
学校によって大きく違うのは「返金額」より通知ルール
主要校の公開規定を比較すると、返金方針には大きな差があります。
- KIST:初登校日前のメール辞退なら、授業料などを全額返金
- NIS:入学開始前の期限を基準に判断し、開始後は学期単位
- ASIJ:期限内に書面通知し、まったく在籍しないQuarterが対象
- BST:原則として1学期前の通知が必要
- YIS:授業料は原則返金なしで、一部の例外のみ
ここから分かるのは、「何日前なら返金されるか」だけではなく、メール、専用フォーム、書面のどれが正式な通知として認められるかが重要だということです。
担任へ口頭で伝えても、契約上の退学通知として処理されない可能性があります。
最近の入学手続きで注意したいこと
現在は、学費表やAdmissions HandbookをWebで公開する学校が増えています。その一方で、入学後の返金条件や詳細な運用は、在校家庭だけが閲覧できるParent Portalに掲載される場合もあります。
また、契約書へ電子署名した時点で、リンク先の複数規約へ同意したことになる手続きもあります。
家庭では、電子署名前に次の資料をPDFで保存しましょう。
- 署名した契約書
- 署名日時が分かる画面
- その時点のFee Schedule
- Financial Regulations
- 返金・退学規定
- 学校から受け取った説明メール
Webページは後から更新される可能性があります。どの条件に同意したかを確認できるよう、契約時点の資料を保存しておくと安心です。
保護者の口コミから見える契約時の落とし穴
海外の保護者フォーラムでは、入学契約について次のような悩みが見られます。
- デポジットを失うだけだと思っていたら、追加の退学費用を請求された
- 学期開始前に辞退したのに、1学期分の支払いを求められた
- 退学の連絡をしたが、正式な書面通知として扱われなかった
- 契約書のWithdrawal条項を入学後に初めて読み直した
- 学校を変えたいが、成績表や転校書類の発行条件が不安
特に、人気校のWaiting Listから急に合格が出た際、現在の学校を辞退しようとして、デポジット以外のWithdrawal Feeに気づいたという相談があります。別の事例では、「年度途中の退学には4週間前の通知が必要」という条項が、入学前の辞退にも適用されるのかが争点になっていました。
これらは個別の海外事例であり、日本の学校へそのまま当てはまるものではありません。
ただし、保護者が「常識的にはこうだろう」と理解していた内容と、契約文の条件が異なることがある点には注意が必要です。
編集部の一言|良い学校ほど契約が短いとは限らない
入学契約書が長いと、不信感を持つ保護者もいるかもしれません。
しかし、契約書やHandbookが詳しいこと自体は、必ずしも悪いことではありません。
むしろ比較したいのは、次の点です。
- 費用と返金条件が具体的に書かれているか
- 保護者だけが一方的に責任を負う内容になっていないか
- 学校側が提供する支援や手続きも明記されているか
- 退学や処分の判断過程が説明されているか
- 質問に書面で回答してくれるか
- 入学後も規約を確認できるか
「規定が厳しい学校」と「規定が曖昧な学校」では、前者の方が家庭にとって判断しやすい場合もあります。
大切なのは、学校に都合のよい条項だけでなく、家庭が取れる手続きや相談先まで明確になっているかです。
家庭でできる契約前30分チェック
署名前に、夫婦や家族で次のチェックを行いましょう。
お金
- 初年度の支払総額はいくらか
- 返金不可の費用はどれか
- 翌年度の学費は値上がりする可能性があるか
- 分割手数料や遅延手数料はいくらか
転校・退学
- 何日前までに通知する必要があるか
- 正式な通知方法は何か
- 返金は日割り・学期単位のどちらか
- 転勤や病気の例外規定はあるか
子どもの学校生活
- 必要な英語・学習水準を満たせない場合の対応
- 特別支援やEALの追加料金
- 停学・退学の条件
- 成績や処分に異議を申し立てる方法
情報管理
- 写真や動画の公開範囲
- 外部アプリへの情報提供
- 退学後のデータ保管期間
- 同意を後から変更できるか
不明点は、次のようにメールで確認できます。
Could you please clarify whether this fee is refundable if we withdraw before the first day of school?
初登校日前に辞退した場合、この費用が返金されるか明確にしていただけますか?
Which documents form part of the enrollment agreement?
入学契約には、どの書類が契約内容として含まれますか?
What is the formal procedure for submitting a withdrawal notice?
正式な退学通知は、どのような手続きで提出しますか?
契約内容に納得できない場合はどうする?
まず学校へ、該当条項の意味と費用計算の根拠を書面で確認しましょう。
日本の消費者契約法では、契約解除によって事業者に生じる平均的な損害を超える解約料について、超過部分を無効とするルールがあります。ただし、実際にどの金額が「平均的な損害」に当たるかは、契約内容や事情によって異なります。
高額な費用を請求された場合や、説明と契約書の内容が異なる場合は、消費者ホットライン「188」を通じて、地域の消費生活相談窓口へ相談できます。
おわりに
インターナショナルスクールの入学契約では、授業料の金額だけでなく、退学、返金、学費未納、在籍継続、懲戒、個人情報など、幅広い条件への同意を求められます。
特に確認したいのは、次の12項目です。
- 契約者と支払責任者
- 学費に含まれるもの
- 支払期限と遅延時の対応
- 学費の値上げ条件
- 返金不可の費用
- 入学前の辞退条件
- 途中退学の通知期限
- 学費未納時の制限
- 在籍継続の条件
- 停学・退学の規定
- 写真・個人情報の扱い
- 苦情・異議申立ての方法
契約書に署名する前に、関連するHandbookやFinancial Regulationsも確認し、不明点は書面で質問しましょう。
条件を十分に理解したうえで入学することが、学校と家庭の認識のずれを防ぎ、安心して学校生活を始めることにつながります。
皆さんのスクール選びの参考になれば幸いです!


