「駐在じゃなくて教育移住でシンガポールのインターに入れることってできるの?」「日本人の子どもでも入学できる?英語力はどのくらい必要?」
シンガポールのインターを検討し始めると、情報が英語だらけでなかなか全体像がつかめない、という経験をしている保護者の方は多いと思います。
この記事では、シンガポールのインターナショナルスクールの特徴から、日本のインターとの具体的な違い、学費の実態、入学資格の条件、カリキュラムの種類、そして駐在員家庭と教育移住家庭それぞれの視点までを整理していきます。
シンガポールのインターが日本人に選ばれる理由

シンガポールは、アジアの中でも特に教育水準が高い国として知られています。国際学力調査PISAでは数学・理科・読解力のすべてで世界トップクラスの成績を継続的に出しており、その教育熱の高さはシンガポール全体の文化として根付いています。そこにインターナショナルスクールという形で英語中心の国際教育が組み合わさることで、日本人ファミリーにとって非常に魅力的な選択肢になっています。
また、シンガポールは英語・中国語・マレー語・タミル語の4言語を公用語とする多民族国家で、英語が日常的に通じる環境が整っています。欧米圏に移住するのと比べて時差が少なく(日本との時差は1時間)、フライトも7時間前後で行き来できます。治安が良く、食事も口に合いやすいことから、子どもを連れての海外生活のハードルが他の国と比べて低い点も、日本人ファミリーが選ぶ理由のひとつになっています。
シンガポールのインターの規模と種類
シンガポール国内には分校も含めると65〜70校前後のインターナショナルスクールがあるとされており、選択肢の幅が広いのが特徴です。学校の系統はアメリカ系、イギリス系、オーストラリア系、シンガポール系など多岐にわたり、採用しているカリキュラムも学校によって異なります。規模も小さなアットホームな学校から、3,000人以上が在籍する大規模校まで様々です。日本からシンガポールへの転入を検討している場合、まずこの選択肢の多さに圧倒されることが多いのですが、後述するカリキュラムの種類を軸に絞り込むと整理しやすくなります。
また、近年は予算重視のいわゆるバジェットインターと呼ばれる新興校が増えており、年間授業料が20万シンガポールドル(約200万円)を大きく下回る学校も出てきています。従来のシンガポールインター=高額というイメージが必ずしも当てはまらなくなってきているため、学費だけで先入観を持たずに幅広く調べてみることをおすすめします。
学費の実態、日本のインターと比べるとどうなの?

シンガポールのインターナショナルスクールの学費は、日本のインターと比べても高水準なことが多いです。ただし学校によって幅が非常に大きく、一概に高いとは言い切れません。目安として、シンガポールの主要インターの年間授業料を見てみると、名門校のシンガポール・アメリカンスクールは年間36,950シンガポールドル(約370万円・2023年時点)、世界的名門校のUWCSEAは51,222シンガポールドル(約510万円・同)という水準です。一方、バジェットインターと呼ばれる新興校では20,155シンガポールドル(約200万円)前後から通える学校もあります。
対して日本のインターは年間授業料が150万〜300万円が相場で、諸費用込みで年間250万〜400万円前後というのが現実的な総費用です。この数字だけ見ると、有名どころのシンガポールインターは日本のインターより高く、バジェットインターなら同水準または少し安い、という構図が見えてきます。ただしシンガポールで生活する場合は授業料以外に、現地の家賃・生活費・日本語補習校の費用なども加わります。物価の高いシンガポールではファミリーの月々の生活費が50万〜100万円規模になることも珍しくなく、学費の数字だけを見て判断するのは危険です。
駐在員と教育移住、費用の見え方が全然違う
シンガポールでインターに子どもを通わせるファミリーは、大きく2つに分かれます。会社から赴任している駐在員家庭と、教育を目的に自ら移住する教育移住家庭です。駐在員家庭の場合、会社からの学費補助が出るケースが多く、日本人学校相当の学費を会社が負担してくれる会社も珍しくありません。その場合、インターとの差額だけが自己負担になるため、経済的なハードルが下がります。一方で教育移住を選ぶ家庭は、学費から生活費まですべて自己負担です。収入が増えるわけではなく支出が急増するため、相当の資金計画と覚悟が必要になります。シンガポールのインターを真剣に検討する場合、自分の家庭がどちらのパターンかを明確にしてから費用シミュレーションをすることが大切です。
なお、シンガポールには日本人学校も2校(小学校)と1校(中学校)あり、年間授業料は約83万〜113万円(バス代込み)と、インターに比べてかなり安価です。インターへの入学を迷っている段階で、まず日本人学校という選択肢を比較検討に入れておくことも現実的な判断です。
📋 シンガポールのインター検討前に確認しておきたいこと
- シンガポールのインターの学費は年間200万〜500万円以上と幅が大きい
- 日本のインターの学費(年間250〜400万円総額)と同水準〜高めの設定が多い
- 生活費・日本語補習校の費用が別途かかる点を見落としがち
- 駐在員家庭は会社の学費補助の有無で自己負担が大きく変わる
- 教育移住の場合は全額自己負担のため資金計画が必須
- 日本人学校(年間83万〜113万円)との比較も必ず検討する
- バジェットインターなら年間200万円前後から選択肢がある
カリキュラムの種類、どれを選ぶかで進路が変わる

シンガポールのインターナショナルスクールで採用されているカリキュラムは主に3系統あり、どれを選ぶかが卒業後の進路に直接影響します。日本のインターと同じカリキュラムが使われているため、日本国内でインターに通っていた子どもがシンガポールに転入する際に、同じカリキュラムの学校を選ぶとスムーズに移行できるというメリットもあります。それぞれの特徴を理解しておきましょう。
最もよく知られているのが国際バカロレア(IB)です。スイスのジュネーヴに本部を置く機関が提供する国際的な教育プログラムで、3〜12歳対象のPYP、11〜16歳対象のMYP、16〜19歳対象のDPという段階があります。シンガポールのインターでもIB認定校は多く、IBディプロマを取得すれば世界160か国以上の大学への出願資格になります。日本の大学でも2003年の文科省改正以降、IBディプロマが大学入学資格として認められており、早慶・ICU・上智などがIB入試枠を設けています。
ケンブリッジ式とアメリカ式の違い
IBと並んで人気が高いのがケンブリッジ式カリキュラム(IGCSE・Aレベル)です。英国ケンブリッジ大学の教育機関が提供するプログラムで、5〜16歳を対象としたIGCSEと、16〜19歳を対象としたAレベルがあります。Aレベルを取得すれば英国をはじめとする世界各国の大学への出願資格が得られます。シンガポールはもともと英国の影響を強く受けた国のため、ケンブリッジ系カリキュラムを採用している学校が多いのも特徴です。アメリカ系のカリキュラム(AP・コモンコアなど)はアメリカンスクールで採用されており、アメリカの大学進学を目指す家庭に選ばれています。
子どもが最終的にどの国のどんな大学を目指すかが、カリキュラム選びの出発点になります。日本の大学も候補に残しておきたいなら、IBディプロマが最も汎用性が高いです。英国やオーストラリアの大学を視野に入れているならケンブリッジ系、アメリカ系なら当然アメリカ式カリキュラムが有利です。シンガポールのインターは学校数が多い分、選択肢がある反面、入学後に進路方針を変えると転校が必要になるケースもあるため、最初の学校選びは慎重に行うことが重要です。
日本との違い、環境・言語・学校文化を比べると

シンガポールのインターと日本のインターは、採用しているカリキュラムは同じでも、子どもを取り巻く環境がまったく異なります。日本のインターに通う子どもは、学校では英語漬けでも帰宅すれば日本語の生活が続きます。一方シンガポールでは、学校を出たあとも英語が飛び交う環境が続き、スーパーや習い事でも英語でコミュニケーションする場面が増えます。この24時間の言語環境の差は、英語習得のスピードに如実に現れます。シンガポールに来て1〜2年で英語が自然に出てくるようになる子どもは多く、特に幼少期から入学した場合の言語習得は日本国内では得られないペースで進みます。
学校文化の面でも違いがあります。シンガポールのインターは多国籍の生徒が集まるため、クラスに60か国以上の国籍が混在する学校も珍しくありません。日本のインターも多様性を謳っていますが、実際には日本人生徒の比率が高い学校も多く、シンガポールのインターの多様性とは次元が異なるケースがほとんどです。学校内で英語以外の言語が飛び交い、様々なバックグラウンドを持つ子どもと日常的に過ごす経験は、日本にいながら通うインターでは再現が難しいものです。
日本語力の維持、シンガポールでどうやって続けるか
シンガポールで英語環境のインターに通わせる場合、日本語力の維持は親が意識的に取り組まないとどんどん後退します。学校内では日本語の授業がほぼなく、友達との会話も英語や現地語になりがちです。シンガポールには日本語補習校が複数あり、土曜日に日本のカリキュラムで国語・算数などを学ぶことができます。インターに通いながら週1回補習校に通う日本人ファミリーは実際に多く、子どもの負担は増えますが日本語力を維持するための現実的な選択肢です。帰国後に日本の学校への編入や大学受験を視野に入れているなら、補習校への通学はほぼ必須と考えておく必要があります。
また、日本語力の維持という観点では、日本のインターの方が圧倒的に有利です。シンガポールのインターを選ぶ場合は、英語力の伸びと日本語力の低下をどうバランスさせるかというトレードオフを親が明確に意識して動くことが求められます。どちらかを完璧に保つことは難しく、子どもの年齢・性格・将来の進路を踏まえて現実的な判断をすることが大切です。
入学資格と入学の流れ、日本国籍でも入れるの?

シンガポールのインターナショナルスクールは、基本的に国籍を問わず入学できる学校がほとんどです。日本のインターの一部には外国籍または帰国子女に限定される学校がありますが、シンガポールのインターではそのような国籍制限はほぼなく、日本国籍の子どもでも問題なく出願できます。入学の条件として主に求められるのは、英語力と学費の支払い能力の2点です。
英語力の基準は学校によって異なりますが、英語がまったくゼロの状態での入学は一般的に難しいです。多くの学校がEAL(English as an Additional Language)と呼ばれる英語補習クラスを設けており、英語力が不十分な生徒でも補習を受けながら通常クラスに合流できる体制を整えています。ただし高学年での転入ほど英語の壁は厚くなるため、できれば低年齢のうちに入学させる方が言語の習得はスムーズです。年齢が3〜6歳程度なら、英語がゼロでも1〜2年で日常会話をこなせるようになるケースは多く見られます。
人気校のウェイティングリスト問題
シンガポールのインターで知っておかなければいけない現実として、人気校には数年単位のウェイティングリストが存在するという点があります。特にシンガポール・アメリカンスクールやUWCSEAのような実績ある有名校は、入学希望者が殺到しており、申し込んでから数年待ちになるケースも珍しくありません。駐在で突然シンガポールへの赴任が決まった場合、希望の学校に入れないという事態も起こり得ます。人気校を視野に入れているなら、駐在決定前から早めに動き出すことが重要です。
一方でバジェットインターや新興校はウェイティングが少なく、比較的スムーズに入学できる場合が多いです。実績がない分、IBのスコアや大学進学先のデータが少ないというデメリットはありますが、カリキュラム自体は同じIBやケンブリッジ式を採用しているため、教育内容として大きく劣るわけではありません。学費と学校の実績、そしてウェイティングの現実を総合的に判断して学校を選ぶことが大切です。入学手続きに必要な書類は日本のインターと同様に、前の学校の成績証明書・出生証明書・ワクチン接種記録などが一般的で、英語への翻訳が必要なケースもあります。
シンガポールのインターを選ぶかどうかの最終判断は、学費・英語環境・日本語力の維持・進路の4つを軸に考えると整理しやすくなります。学費は学校によって年間200万〜500万円以上と幅があるため、家計に合った学校を探すことは十分可能です。英語環境については、日本のインターとは比較にならないほど濃い環境が得られる一方で、日本語力の低下というトレードオフが生じます。進路については、IBやケンブリッジ式カリキュラムを通じて世界の大学への道が開かれますが、日本の大学も視野に残したいなら補習校との併用が現実的な対応策になります。駐在なのか教育移住なのか、子どもの年齢はどのくらいか、最終的にどの国で大学に進ませたいかという3点を家庭内で明確にしたうえで、学校の見学や資料請求に進むことをおすすめします。




