「親が英語得意じゃなくて、家でどう教えたらいいのか迷う」「短いフレーズでいいから、まずは人前で言える体験を作ってあげたい」
幼児の自己紹介は、語彙よりも出せる勇気が主役。順番を決めて、口が勝手に動くくらいまで小さく反復すると、驚くほどスムーズに話し出します。
この記事では、家で今日からできる練習の流れを「音→単語→文→やり取り」の順にまとめました。親の声かけや、つまずいた時の戻り方、12秒・30秒テンプレまで用意してあるので、読み終えたらそのまま親子でスタートできます。
自己紹介は最小の会話だからこそ伸びが早い

英語の長い暗記や難しい文法は不要。幼児期の自己紹介は、あいさつ・名前・好きなことの三点セットが言えれば立派な「会話の入口」になります。
まずは場面を固定し、言う順番を決めて、同じ型を何度も通す。これだけで口のエンジンが温まり、他のフレーズにも波及します。ここでは、土台づくりとして押さえておきたい二つの視点を、家庭の空気感のままに整理しておきます。
自己紹介の最小パーツを決める
ゴールは三つ。
Hello / Hi の一言、I am ○○(名前)または My name is ○○、I like ○○(好きなもの)。
年齢を足すなら I am five years old、住んでいる場所なら I am from Tokyo。まずはこの引き出しを固定して、順番も毎回同じに。型があると、子どもは安心して声を出します。
声が出る環境を先に作る
発音の正確さや文法の正しさより、楽しく言えたかどうかが大切。親の役目は審査員ではなく相棒。噛んだら笑って「もう一回行こう」。わからなければジェスチャーで助ける。失敗しても安全な場所だと分かると、子どもは前に出ます。
ステップ1〜3:音と単語で言える口を作る

いきなり文章を覚えようとすると、幼児は固まりがち。まずは音とリズムでウォームアップし、次に単語の棚を用意し、最後に短い文へとつなぎます。ここまでで自己紹介の骨組みが立ち上がります。
ステップ1:あいさつの音とリズム
親がモデル、子どもがエコー(まねっこ)で二往復。
Hi! → Hi!、Hello! → Hello!、Nice to meet you. → Nice to meet you. の三本を2分で。手を振る・タッチするなど簡単な動きを足すとリズムが乗り、声が出やすくなります。
ステップ2:名前・年齢・好きなものの単語
I / my / like / from / years old を「カード」や「写真アルバム」に紐づけると覚えが早い。自分の写真を指さして I、家族写真で my family、好きなおもちゃで I like cars。意味とイメージが一体化すると、単語が自動で出てきます。
ステップ3:二文の自己紹介
Hello. I am ○○. I like ○○. まずはここまで。二文でも、人前だと達成感は大きい。噛んでも構いません。声が前に出たら、その日は勝ち。次回へつながります。
ステップ4〜6:つなぐ・見せる・やり取りする

自己紹介がひとり語りで終わらないように、接続語や相手への一言を足していきます。ここで「話して終わり」から「会話が始まる」に切り替わります。
ステップ4:短い接続で内容を伸ばす
and / also / but a little を足すだけで表現が広がります。I like dinosaurs and cars. I like soccer, but a little. 文を増やすのではなく、安心できる型に小さく足すのがコツ。
ステップ5:ショー&テルで見せて話す
お気に入りを一つ手に持ち、This is my ○○. I like it because ○○. の二文でショート発表。視線が物に向くので恥ずかしさが薄れます。because 以降は短くてOK。it’s fun や it’s cute など一語でも成立します。
ステップ6:相手に返す一言を覚える
自己紹介の最後に What about you? を添えるだけで、やり取りが生まれます。返事が聞き取れなくても、Really? / That’s nice! の一言を練習しておけば、会話が途切れません。
家での練習設計:一日5分×2コマで回す

長時間より、小分けの連続が幼児には効きます。朝と夜に5分ずつ、合計10分。朝は口を温め、夜は締めて記憶を定着。親の負担にならない仕組みを先に作りましょう。
朝:ミラータイムで口を起こす
洗面台の鏡の前で Hi / Hello / I am ○○ をセットで。鏡があると口の形が見えて、発音の真似が自然に起きます。三往復で終わり。短く気持ちよく切り上げると、続きます。
夜:エコー読みと“一言加える”練習
絵本一ページを親→子でエコー、最後に I like ○○ を一言だけ変えて言う。「今日はりんご、明日はぬいぐるみ」のように、言い換えの楽しさを入れると、同じ型でも飽きません。
週末:ミニ発表会を30秒
家族の前で30秒だけ。Hello. I am ○○. I like ○○ because it’s fun. What about you? まで行けたら花丸。ビデオに撮って本人と一緒に見返すと、次の目標が自然に見えてきます。
よくあるつまずきと、やさしい戻し方

うまく言えない日はあります。無理に押し込むと英語自体がいやになってしまう。困った時の合言葉は「短く戻す・笑って締める・次に持ち越す」。ここでは三つのケースを先回りで置いておきます。
声が小さい・固まる
場面を変えるのが最短。立って言うのをやめて、床に座ってお気に入りを握って言う。親が先に失敗して笑いを作ると、空気がゆるみます。今日は Hello と名前だけで終了、でもOK。成功体験を必ず残すことが次につながります。
文法がぐちゃっとする
I am five old のような言い間違いは、すぐに指摘せず正しい形を返すだけ。
Child「I am five old.」→ Parent「Great! I am five years old.」と自然にリピートで上書き。通じた経験を壊さないのがコツです。
語彙が出ない
置き換えとジェスチャーで進める。恐竜の名前が出なければ big animal、スポーツが出なければ ball でいい。手で形を作りながら言えば、記憶に残ります。次回の練習で正しい語を一つだけ足せば十分。
完成テンプレとカスタマイズのヒント

最後に、そのまま使える型を二つ用意しておきます。まずは真似、慣れてきたら一語ずつ入れ替えて、自分の言葉にしていきましょう。
12秒テンプレ(3文)
Hello. I am ○○. I like ○○.
短いけれど、初対面の場なら十分。笑顔とアイコンタクトを添えるだけで印象が変わります。
30秒テンプレ(5文)
Hello. My name is ○○. I am ○ years old. I am from ○○. I like ○○ because it’s fun. What about you?
because の後ろは一語でもOK。fun / cool / yummy / cute あたりから始めると言いやすいです。
シーン別のひと工夫
学校の朝は Hi と短く、行事や面談では Hello と丁寧に。オンラインでは手を振ってから Hello を置き、最後に Thank you を足す。場面に合わせた挨拶の温度を親が示すと、子どももすぐ真似します。
まとめ

幼児の自己紹介は、完璧さよりも「言えた自分が好きになる」体験づくり。あいさつ・名前・好きなことの三点セットで型を作り、音→単語→文→やり取りの順に小さく積む。
家では一日5分×2コマで、朝に口を起こし夜に締める。つまずいたら短く戻して笑って終わる。これだけで十分進みます。
英語は勇気のスポーツです。今日の一言が、明日の一歩を軽くします。親子の声と笑顔で、最初の自己紹介を気持ちよく通していきましょう。