インターナショナルスクールに通っている子どもの英語と日本語のバランスとは?

インターナショナルスクール
こんな人向けの記事です
  • 家では日本語で育てたいけれど、英語のキャッチアップも気になる
  • 学校がすべて英語だから、休日はどっちの言語を優先すればいい?

「日本語の読み書きが遅れないか心配。かといって英語の宿題も重い」「親ができるちょうどいい塩梅を、具体的に知りたい」

インターナショナルスクールの子どもは、毎日が小さなバイリンガル運用。英語で学び、日本語で家族と過ごす。その往復に迷いが出るのは自然です。ここでは、家庭で無理なく回せる言語のバランスを、生活の時間割に落とし込みながら実践的な具体例を踏まえ整理します。

読み終えるころには、平日と休日の配分、学年別の優先順位、つまずきのサインの見極め方まで、今日から試せる形でイメージできるはずです。

バランスが難しく感じる理由を先にほどく

英語と日本語、どちらも伸ばしたいのに片方を増やすともう片方が心配になる。

悩みがループするのは「時間」「場面」「役割」の設計が曖昧だからです。言語は量だけでなく、使われる場の目的と感情で定着が変わります。

ここでは、家族の生活に合わせて英語=学びの道具、日本語=心の土台という役割の目安を置き直し、焦点をはっきりさせていきます。理想論ではなく、今ある時間で回せる小回りの利く考え方です。

英語は「学びの入口」、日本語は「思考の深呼吸」

学校では英語が授業の媒体です。

新しい概念や手順は英語で入ってきます。家庭では、その日の出来事や感情、家族の予定などを日本語でしっかり言葉にする。すると、英語で得た知識を日本語で整理し直す循環が生まれ、どちらの言語にも厚みが出てきます。片方を我慢するのではなく、役割を分ける。これだけでどっちも中途半端という不安はぐっと和らぎます。

「入力」と「出力」を分けて考えると迷いが消える

英語は入力(授業・読書・動画)と出力(発表・ライティング)。日本語も入力(読み聞かせ・ニュース)と出力(家族の会話・日記)。家庭では、今日はどちらの言語の出力を増やす日かを先に決めると、配分の迷いが減ります。

英語の宿題が重い日は英語の出力、翌日は日本語の出力、といった具合。振り子の動きが大きくても、週で見るとバランスは整っていきます。

家の中の言語設計が大切

頭の中の理屈より、住まいの動線に仕込む仕掛けが効きます。同じ家でも、場所が変われば気持ちが切り替わるもの。ここでは、キッチン・リビング・勉強スペースという三つの生活ゾーンに役割をふり、言語の使い分けを無理なく回す方法を提案します。

ルールはゆるく、でもなんとなくを減らす。家族が疲れていても機能する、小さな工夫が肝です。

キッチンは日本語のハブ、学習机は英語の工房

食卓では今日の出来事を日本語でたっぷり会話する。

嬉しかった・悔しかった・困ったを一語ずつでもいいから口に出す。感情語彙は母語側に置くと、子どもの自己理解が安定します。学習机は英語の出力を優先。宿題・音読・ショー&テルの練習はここで。リビングは切替ゾーン。英語の絵本も日本語の図鑑も手が届く場所に置き、親が子の様子を見てその日の比重を微調整。場所ごとになんとなくの言語スイッチがあると、家族のストレスが下がります。

ミニタイムテーブルは15分単位で

長時間の縛りは続きません。平日夜は15分×2コマ、休日は30分×2コマで十分。英語の音読→日本語の会話、英語のライティング→日本語の読み聞かせ、のように対になるコマを並べると往復が生まれます。時間を短く切ると「もう少しやりたい」で止められるのもコツ。やり切った満足より、次もやりたい余白が習慣を作ります。

平日と休日の配分モデル

理想のスケジュールは、習い事や宿題量で簡単に崩れます。大事なのは、崩れたときの戻し方を持っておくこと。

ここでは、平日と休日の現実的な配分モデルを置き、週単位で帳尻が合う運用にします。毎日50:50を守るより、1週間の合計でバランスをとるほうが健全です。

平日:英語60、日本語40を目安に

放課後は英語の宿題と音読で英語の出力を確保。寝る前は日本語の読み聞かせと雑談で心の整え。数字は目安で、宿題が重い日は英語70、日本語30に揺らしてOK。その代わり、翌日は日本語側を手厚く。英語の音読を1ページ減らして、日本語の対話を5分増やす、のようなマイクロ調整で安定します。

休日:日本語60、英語40で深さと体験を

午前は外遊びや家族行事、日本語で体験を言葉に。午後に英語のショー&テルや絵本のエコーリーディングで英語の出力を短く濃く。

英語の大量インプットは平日に任せ、休日は「英語で自分から話す」を小さく積むイメージ。これだけで週明けの発言が軽くなります。

学年別の優先順位

同じバイリンガルでも、年齢で課題は変化します。低学年は音の感度が高く、語彙は体験と結びつけるのが早い。高学年になるほど抽象度が上がり、読解と論述の比重が増えます。ここでは学年帯ごとに「これだけは守る」を絞り込みます。

低学年:音と語彙を楽しく厚く、日本語の物語で心を広げる

英語は音読とチャンツ、リズムで遊ぶ。毎日5分でいいので口を動かし、ショー&テルを一言だけでも続ける。

日本語は読み聞かせの量を確保し、感情語彙を育てる。嬉しい・悔しい・恥ずかしい・誇らしいのような色のついた言葉を、家族の会話で何度も触る。母語の感情語彙が厚いほど、英語の表現も伸びやすくなります。

中学年〜高学年:英語の書く力と日本語の深く読む力

英語は段落ライティングとプレゼン。

意見→理由→例の三段で短く書く練習を、週に1本やる。日本語は説明文をいっしょに読み、要点を自分の言葉に言い換える。

ここで身につく要約と根拠は、英語のエッセイにも直結します。両言語で論の柱を立てる感覚を、家庭の会話に持ち込めると強いです。

つまずきのサインとリカバリー

バランスは生き物。完璧に保つのではなく、崩れたら素早く組み替えればいいのです。

ここでは、よくあるサインと、そのときの舵の切り方を具体的に置いておきます。焦りを感じたら、まずは量ではなくどの出力を増やすかに戻るのが近道です。

こんなときは日本語を増やす

家での出来事説明が短くなる、感情が単語一個で止まる、長い日本語の本を嫌がる。これは意味を貯める倉庫が細っているサイン。

1〜2週間、日本語の読み聞かせと会話の時間を増やし、英語のインプットは学校に任せる。日本語の物語や事実系の本で深さを取り戻すと、英語の理解も不思議なくらい戻ります。

こんなときは英語の出力を増やす

授業内容は分かっているのに発表を嫌がる、語尾が曖昧で声が小さくなる、書く課題に時間がかかり過ぎる。これは英語の外に出す筋力が弱っているサイン。

音読の量は増やさず質を上げ、ショー&テルを30秒だけ毎日。ライティングは一段落に絞り、意見→理由→例→結びの骨組みだけ作る。小さな成功体験を連続させると、発言のブレーキが外れます。

まとめ

英語と日本語のベストバランスは、家庭ごと・週ごとに揺れて当然。だからこそ役割の分担(英語=学び、日本語=心)出力の優先(今日はどちらの出力を増やすか)場所と時間のラベル(キッチン=日本語、机=英語、リビング=切替)という三つの土台に置き直すと、日々の迷いが静かになります。


平日は英語60・日本語40で薄く往復、休日は日本語60・英語40で深さと体験。学年が上がったら、英語は書く・話す、日本語は深く読むへシフト。

崩れたらサインを見て、出力の側からそっと戻す。完璧より、続く設計。家族のペースに合わせて小さく始め、月末に振り返ってまた整える。その繰り返しが、二つの言語をしなやかに育てていきます。