【未来教育】答えのない問いを考えられる子の育て方

基礎知識
こんな人向けの記事です
  • 子どもの探究心を育てたい!
  • 家庭でどのようなことを意識して教育すればいいかな?

「子どもが答えがない問題にはフリーズしちゃうんです」「正解がないと不安になるみたいで…」そんな声を聞くことが増えてきました。確かに、学校のテストや受験では“正しい答え”が求められる場面が多かったかもしれません。でも、今の社会やこれからの未来は、そう単純ではありません。

技術の進化や価値観の多様化が進む中で、「何が正解か分からない」という問いに向き合う力が必要とされています。たとえば「地球温暖化を止めるには?」「AIと人間、どちらに仕事を任せるべきか?」

そんな問いには、唯一の答えが存在しません。

では、そんな“答えのない問い”に立ち向かえる子をどう育てたらよいのでしょうか?家庭でできる関わり方や、探究心を育てる教育環境について、一緒に考えてみませんか。

社会の変化と“非認知能力”の重要性

かつては「いかに早く・正確に答えを出せるか」が評価される時代でした。しかし今は、AIやインターネットの発達により、正解を出す作業は“機械”の得意分野となり、人間に求められるのは「問いを立て、考え続ける力」に変わってきています。

OECDの学習到達度調査(PISA)でも、読解力や数学的リテラシーと並び、「複雑な問題に対する思考力」が重視され始めています。日本の新学習指導要領でも、「主体的・対話的で深い学び」が打ち出され、知識よりも“考える過程”に焦点が当たるようになりました。

この流れを受けて、教育現場では探究学習やSTEAM教育といった、“正解のない問い”に取り組む活動が増えています。いま注目されているのは、いわゆる「非認知能力」と呼ばれる力。これは、協調性・自己肯定感・粘り強さ・好奇心・創造性など、“数値化できない力”です。

答えのない時代に必要なのは“問い続ける姿勢”

非認知能力の中でも、「探究心」や「思考の柔軟性」は、“答えのない問い”と向き合うための土台となります。 たとえば、あるテーマに対して「そもそも、これってどういうこと?」「他にも見方があるんじゃない?」と自分から疑問を持つ力。

そこに「自分なりの答えを試行錯誤して導こうとする力」が加わると、子どもたちは“正解”ではなく“納得解”を目指せるようになります。

このような力は、一朝一夕で身につくものではありません。小さな頃からの「問いを面白がる経験」や、「考えてもすぐに答えが出ないことに耐える経験」の積み重ねが大切です。

家庭でできる“問いと向き合う力”の育て方

ここでは家庭でできる“問いと向き合う力”の育て方について解説していきます。

  • 「わからないね」と一緒に悩む関係を築く
  • 生活の中に「問い」を仕込む習慣を
  • 「正解」を教えすぎない勇気も大切

それぞれ解説します。

「わからないね」と一緒に悩む関係を築く

子どもが「どうして人は争うの?」「なんで勉強しなきゃいけないの?」と聞いてきたとき、つい「そういうもんだから」と答えてしまっていませんか?でも、ここが実は伸ばしどきなのです。

親御さんが「それ、いい問いだね」「一緒に考えてみようか」と返してあげるだけで、子どもは「考えていいんだ」「問いを持ってもいいんだ」と感じることができます。この“肯定される経験”が、非認知能力の中でも特に重要な「自己効力感」を育てます。

生活の中に「問い」を仕込む習慣を

・「なんでお風呂って夜に入るんだろう?」

・「朝ごはんって絶対食べた方がいいのかな?」

・「もし動物と話せたら、何を聞きたい?」

こうした問いかけを、家庭の中で“遊び感覚”で投げかけてみる。答えが出なくてもかまいません。「考える時間」そのものを楽しむことが大切です。

また、子どもが自分の意見を言おうとしたときは、途中で口を挟まず最後まで聞くこと。たとえ的外れな意見でも、「そう思ったんだね」と受け止める姿勢が、子どもの思考を育てる土壌になります。

「正解」を教えすぎない勇気も大切

親としては、「正しい答えを教えてあげたい」と思うのが自然です。でも、すぐに答えを出してしまうと、子どもは「考える前に聞けばいい」と学んでしまうことも。

大人が少しだけ“わからないふり”をして、「どう思う?」と返してみる。そんな関わりが、「自分の頭で考える練習」になっていきます。

家庭内で「今日の問い」を一つ決めて、寝る前に少し考えてみるのもおすすめです。「人ってどうして笑うんだろう?」「未来には学校って必要かな?」

たった数分でも、「問いと向き合う時間」が子どもの内側に残ります。

“探究”を育てる学びの場との出会い

家庭での関わりとあわせて、「外部の学びの場」を活用することで、子どもたちの探究力がさらに伸びることがあります。

たとえば、インターナショナルスクールや探究型カリキュラムを導入している教育機関では、「問いを立てる力」を重視した授業が行われています。たとえば「地球にとってやさしい生活って何?」など、実生活に結びついたテーマで、子どもたち自身が考え、調べ、議論し、発表する機会が豊富です。

また、STEAM教育(Science, Technology, Engineering, Arts, Mathematics)をベースとしたスクールでは、学年の枠を超えてプロジェクトに取り組む活動があり、「失敗しても学びになる」という文化が根づいています。

「最近では、英語環境を整えたスクールも増えてきています」といった自然な形で、こうした場所を“選択肢のひとつ”として知っておくことは、親御さんにとって大きな安心感につながるかもしれません。

家庭とスクール、両輪で育てる“思考体力”

スクールでの探究活動を、家庭でも話題にして共有する。逆に、家庭で出た疑問をスクールで取り上げてもらう。そんな“循環”が生まれると、学びはより深まり、子どもの内面にしっかりと根づいていきます。

親御さんがスクールでの体験に関心を持ち、「どんな問いが出たの?」「その時どう思った?」と聞いてあげるだけで、子どもは「考えることって面白い」と感じるようになります。

スクールと家庭の“思考文化”がつながると、子どもの中で「考えること」がごく自然な営みになります。これは、試験や評価のためではなく、“生きるための思考”として育っていくものです。

「正解がないこと」に向き合うのは、大人にとっても難しいことです。でも、そんなわからなさを子どもと一緒に楽しめる家庭こそが、未来の学びの土台になります。

問いに対する唯一の正解を急がず、「なんでだろうね」「わかんないけど面白いね」と言える空気が、子どもの非認知能力や思考の柔軟性を育ててくれます。

答えを教えるのではなく、問いを面白がる親でいること。そんな関わりが、これからの時代に必要な考える力を、家庭の中から育てていくのではないでしょうか。

焦らなくても、完璧じゃなくても大丈夫。親御さんの「一緒に考えよう」が、子どもにとって最良の学びになります。その積み重ねが、未来をしなやかに生きる“考える子ども”を育てていくはずです。