親も一緒に学ぶ?メディアリテラシー教育のはじめ方

基礎知識
こんな人向けの記事です
  • メディアリテラシーを子どもに身につけさせたい!
  • 家庭でできることってあるのかな?

「ネットの情報、全部信じちゃってるみたいで不安…」 「YouTubeばかり見てるけど、ちゃんと内容を理解できてるのかな?」

最近、そんな悩みを抱える親御さんが増えています。スマートフォンやタブレットが当たり前のように家庭にある今、子どもが触れる情報は膨大。でもその中には、信頼できるものもあれば、偏った意見や虚偽の内容も混ざっています。

そんな時代だからこそ、必要なのが“メディアリテラシー”です。情報を見分け、考え、自分の意見を持つ力。この力を育てるには、ただ「スマホを使いすぎないで」と言うだけでは不十分かもしれません。むしろ、親も一緒に「どうやって情報と付き合うか」を考えながら、子どもと学ぶ姿勢が大切になってきます。

なぜ今、“情報の読み解き方”が重要なのか?

私たちが子どもの頃は、テレビ・新聞・学校の先生が情報源でした。しかし今や、SNSや動画、ニュースアプリなど、誰もが情報を「発信できる」時代です。しかも、そのスピードは圧倒的。子どもたちは、無数の情報の中にいながら、それが本当に正しいのか、偏っていないかを判断する力をまだ十分には持っていません。

文部科学省の新学習指導要領でも、「情報活用能力」を“学習の基盤となる資質・能力”として明記し、小中高の全ての段階でメディアリテラシー教育が重視され始めています。OECDのPISA調査においても、情報の信頼性を見抜く力=“クリティカル・リテラシー”が国際的な教育課題として注目されています。

メディアリテラシーとは何か?

メディアリテラシーとは、単に「情報を読める・使える」力ではありません。「誰が、どんな目的で発信したか?」「自分の考えとどう違うか?」「本当にそのまま信じてよいのか?」といった、“情報に対して主体的に関わる力”のことです。

つまり、自分の頭で考え、情報を選び、発信にも責任を持つ。そんな姿勢を育てるのがメディアリテラシー教育なのです。

家庭でできるメディアリテラシー教育の工夫

ここでは家庭でできるメディアリテラシー教育について大事なポイントを解説していきます。

  • 会話がカギ。「その動画、どう思った?」と聞いてみる
  • 「正解」を教えるのではなく、「視点」を共有する
  • デジタルとの距離感も話し合いでつくる

それぞれ解説します。

会話がカギ。「その動画、どう思った?」と聞いてみる

家庭でできる最も大切なことは、“日常の情報”について一緒に考える習慣をつくることです。

たとえば子どもがYouTubeで面白い動画を見ていたら、「どこが面白かったの?」「この人の言ってること、どう感じた?」といった質問をしてみましょう。内容を否定せず、あくまで“感想”を引き出す姿勢がポイントです。

それによって、子どもは「情報は受け取るだけじゃなく、自分の頭で考えていいんだ」と学びます。小学生なら「ニュースって、誰が決めて流してるの?」といった問いも有効。自分なりの意見を持つ第一歩になります。

「正解」を教えるのではなく、「視点」を共有する

親が気をつけたいのは、「それは間違ってる」「こう考えなさい」と“教える”ことに偏らないこと。正解を与えるより、「こういう見方もあるんだよ」「こんな情報もあるけど、どう思う?」と問いかける方が、子どもの思考は深まります。

家庭の中でニュースや話題の出来事を一緒に見る際も、「このニュース、いろんな立場の人がいるよね」と多角的に見る視点を意識することで、子どもは一面的な判断を避けられるようになります。

デジタルとの距離感も話し合いでつくる

「スマホは1日30分まで!」と一方的に制限するよりも、「なんでその時間にするのがいいと思う?」と一緒にルールを考える方が、納得度も高く、主体的な使い方につながります。

メディアリテラシー教育とは、親子で“情報との付き合い方”を対話を通じて学ぶこと。ルールを押しつけるのではなく、考える力を引き出す環境づくりが大切です。

探究型の授業やICT教育でも広がるリテラシー教育

最近では、インターナショナルスクールやICT教育を積極的に導入するスクールで、情報との付き合い方を学べる授業が増えています。

たとえば、あるインターナショナルスクールでは、小学低学年から「メディアをどう読むか」「情報にどんな意図があるか」を考えるディスカッションを授業に取り入れています。英語のコンテンツも含めて世界中のニュースを比較するなど、視野を広げる教育が行われています。

また、総合的な探究の時間やプログラミング教育の中で、「デジタルで発信する際のモラル」や「情報の信頼性を見極める力」も育成されています。こうした力は、SNSの使い方にも直結する重要なリテラシーです。

「最近では、子ども向けに情報モラルやフェイクニュースの見分け方を学べる教材を取り入れたスクールも増えています」。家庭だけでは難しい部分を、こうした教育機関と連携してサポートするのも一つの方法です。

家庭と学校の“情報教育サイクル”を作る

学校で扱ったテーマを家庭で会話に出す、逆に家庭で気になった情報を学校で話し合う。

このような「情報を共有する機会」が増えるほど、子どもは「情報を自分ごととして考える姿勢」を身につけていきます。

親御さんが「最近このニュースどう思う?」「今日話題になってたけど、どう感じた?」と聞くだけで、子どもは“自分にも発信する責任がある”という意識を持つようになります。

“メディアリテラシー”という言葉を難しく考える必要はありません。

大切なのは、子どもが情報に“ふれるだけ”でなく、“考える”習慣を持てるよう、家庭での対話を大切にすることです。

親御さん自身が、「情報を見たとき、どこに注目してるか」「どうやって真偽を判断してるか」を言葉にしてみるだけでも、立派なメディアリテラシー教育になります。

情報に正解はひとつではありません。だからこそ「親もわからないことがある」という姿勢を見せることが、子どもにとっては最高の学びになります。

「スマホばかりで不安…」そんな思いを出発点に、今日から少しずつ、“情報とつきあう力”を親子で育てていきましょう。