「外国人教員の経歴や犯罪歴はきちんと確認されている?」
「子どもが被害を訴えたとき、学校はどのように対応してくれる?」
インターナショナルスクールの公式サイトや保護者向け資料を見ると、SafeguardingやChild Protectionという言葉が使われていることがあります。
どちらも子どもの安全に関わる言葉ですが、単なる防犯やいじめ対策だけを意味するものではありません。
セーフガーディングとは、虐待、ネグレクト、性的被害、いじめ、差別、不適切な指導、オンライン上の被害などから子どもを守り、心身ともに安全な環境をつくるための仕組み全体を指します。
子どもへの被害が起きた後に対応するだけでなく、
- 安全な教職員を採用する
- 大人と子どもの適切な距離を定める
- 小さな兆候を記録・共有する
- 子どもが相談できる窓口をつくる
- 問題発生時に外部機関と連携する
といった予防的な取り組みも含まれます。
この記事では、インターナショナルスクールのセーフガーディングの仕組みと、学校選びで保護者が確認したいポイントを解説します。
セーフガーディングとチャイルドプロテクションの違い
学校によって用語の使い方は多少異なりますが、一般的には次のように整理できます。
| 用語 | 主な意味 |
|---|---|
| Safeguarding | 子どもが被害に遭わない環境をつくる予防と対応の仕組み全体 |
| Child Protection | 虐待や重大な危険が疑われる子どもを具体的に保護する対応 |
| Student Well-being | 心理面、健康面、学校生活全体の幸福や安心 |
| Health and Safety | 事故、防災、施設、衛生などの安全管理 |
Safeguardingは、Child Protectionを含む、より広い考え方です。
International School of the Sacred Heartは、子どもを虐待から守ることだけでなく、健康・発達への悪影響を防ぎ、安全なケア環境を整え、学習面・感情面・社会面で成長できるようにすることまでChild Protectionに含めています。
そのため、「校門に警備員がいる」「防犯カメラがある」だけでは、セーフガーディング体制が十分とは判断できません。
セーフガーディングが対象とする問題
セーフガーディングの対象は、身体的な暴力だけではありません。
身体的虐待
殴る、蹴る、強くつかむ、不必要に身体を拘束するなど、子どもの身体へ危害を与える行為です。
心理的虐待
子どもを繰り返し侮辱する、見せしめにする、無視する、恐怖を与える、人格を否定するなどの行為です。
大声で叱ることが直ちに虐待になるとは限りませんが、継続的に子どもの自尊心や安心感を傷つける指導は、セーフガーディング上の問題として扱われる可能性があります。
性的虐待・グルーミング
身体への接触だけでなく、性的な画像や言葉を見せる行為、私的なメッセージのやり取り、秘密や贈り物を利用して子どもとの不適切な関係を築く行為なども含まれます。
ネグレクト
十分な食事、衣服、医療、監督、精神的なケアを与えない状態です。
名古屋国際学園は、食事、衣服、住居、監督、感情的・医療的ケアが適切に提供されないことをネグレクトの例として挙げています。
子ども同士の被害
いじめ、差別、性的なからかい、暴力、仲間外れ、同意のない画像共有などです。
「子ども同士のトラブル」として軽く扱わず、被害の内容や力関係を確認する必要があります。
オンライン上の被害
SNSでの嫌がらせ、なりすまし、不適切な画像の送受信、性的な誘い、個人情報の拡散、生成AIによる偽画像なども、現在のセーフガーディングに含まれます。
学校のセーフガーディングを支える6つの仕組み
1.責任者と相談窓口が明確になっている
学校には、Safeguarding Coordinator、Child Protection Officer、Designated Safeguarding Leadなどと呼ばれる担当者が置かれることがあります。
重要なのは名称ではなく、次の点が明確になっているかです。
- 責任者の氏名と役職
- 連絡先
- 責任者が不在の場合の代理担当
- 教職員に関する相談の連絡先
- 校長や経営陣に関する相談の外部窓口
- 子どもが自分で相談できる方法
ASIJは、フルタイムのSafeguarding Coordinatorを配置し、担当者の連絡先を公式サイトで公開しています。同校は、教職員向け行動規範、Safeguarding Policy、報告手順をまとめたHandbookも整備しています。
ISSHもChild Protection Officerの氏名と専用メールアドレスを公開しています。
相談窓口が「担任または校長」としか書かれていない場合、担任や校長自身に関する問題をどこへ相談するのか確認しましょう。
2.教職員の採用時に身元確認をしている
安全な学校づくりでは、採用段階でリスクを減らすSafer Recruitmentが重要です。
確認したい取り組みには、次のようなものがあります。
- 犯罪経歴の確認
- 過去の勤務先への照会
- 書面だけでなく電話による推薦確認
- 職歴の空白期間の確認
- 過去の懲戒処分や退職理由の確認
- 採用候補者による自己申告
- 子どもと働く適性を確認する面接
インターナショナルスクールの教員は複数国で勤務している場合があります。そのため、現在住んでいる国だけでなく、過去に勤務した国の経歴確認が重要です。
CISは、候補者が働いたすべての国から犯罪経歴確認を集めることを推奨しています。
ISSHは、犯罪経歴、直近の雇用主を含む推薦、過去の有罪判決の自己申告、職歴の確認などを採用時に行うと公表しています。
3.大人の行動ルールが定められている
学校は、明らかな暴力だけでなく、誤解やグルーミングにつながり得る行動も事前に制限する必要があります。
たとえば、次のようなルールです。
- 密室で子どもと二人きりにならない
- 私的なSNSアカウントで生徒と連絡しない
- 個人のスマートフォンで生徒を撮影しない
- 必要のない身体接触をしない
- 子どもへ個人的な贈り物を渡さない
- 学校の許可なく車へ乗せない
- 個人的な秘密を共有しない
- 課外活動や宿泊行事でも同じ基準を適用する
NISでは、教職員だけでなく、業務委託先やボランティアなど、生徒と関わるすべての大人にSafeguarding Codeの遵守を求めています。
保護者ボランティアや外部コーチにも同じルールが適用されるか確認しましょう。
4.全職員が定期的に研修を受けている
セーフガーディングは、担当者一人だけが理解していればよいものではありません。
担任、事務職員、バススタッフ、清掃員、警備員、外部講師など、子どもと接する大人が兆候を理解し、決められた手順で報告できる必要があります。
ASIJは、コミュニティ向けのセーフガーディング研修を毎年実施し、全従業員の身元確認を行うとしています。ISSHも、教職員への年次研修に加え、役割に応じた研修、保護者・生徒向けの教育機会を設けています。
研修の有無だけでなく、新任職員、代替教員、外部コーチにも受講が求められるか確認したいところです。
5.小さな心配も記録・共有する
重大な被害は、突然起きるとは限りません。
- 子どもが特定の大人を急に怖がる
- 登校を嫌がる
- 不自然なけがが続く
- 性的な言葉や行動が増える
- ある教職員が特定の子どもだけを特別扱いする
- 私的なメッセージが送られてくる
といった小さな変化が、後から重要な情報になることがあります。
CISは、行動上の懸念やChild Protectionに関する情報を分類・記録・見直すための国際校向けガイダンスを公開しています。個別の情報を担当者だけで抱えず、複数の記録からパターンを確認できる体制が重要です。
6.学校外の機関と連携できる
重大な懸念がある場合、学校内部だけで解決しようとせず、警察、医療機関、児童相談所などと連携する必要があります。
NISは、必要に応じて保護者、警察、医師、医療専門職、Child Protective Servicesなどと協力すると定めています。
日本では、「虐待かもしれない」と感じた場合、児童相談所虐待対応ダイヤル「189」から地域の児童相談所へ相談・通告できます。学校へ相談しにくい場合や、子どもに差し迫った危険がある場合は、学校の内部手続きだけにこだわらず、外部機関へ相談することも大切です。
緊急性が高く、子どもの生命や身体に危険がある場合は、警察や救急へ連絡してください。
国内インターナショナルスクールの取り組みを比較
公開情報から確認できる取り組みを比較すると、学校ごとに特徴があります。
| 学校 | 公開されている主な特徴 |
|---|---|
| ASIJ | フルタイムのSafeguarding Coordinator、年次研修、全従業員の身元確認、専用PolicyとHandbook |
| NIS | 教職員・業務委託先・ボランティアを対象とするSafeguarding Code、外部機関との連携 |
| ISSH | 専任窓口の公開、教職員・保護者・生徒向け教育、外部業者や来訪者を含む同意制度、詳細な採用審査 |
| KIST | 日本法、国連子どもの権利条約、国際基準に基づくPolicyと保護者向けの直接相談窓口 |
比較するときの注意点
「ポリシーが公開されている学校」と「公開されていない学校」の違いはありますが、Webサイトに文書があるだけで安全性が保証されるわけではありません。
比較したいのは、次の3段階です。
- ルールがあるか
- 実際に運用されているか
- 問題発生後に検証・改善されるか
CISの国際認定では、学校のChild Protection Policyだけでなく、実際の運用も評価基準に含まれます。
認定の有無は一つの判断材料になりますが、保護者自身も具体的な運用を質問しましょう。
セーフガーディングの最新動向
学校の安全対策は、身体的な虐待を防ぐだけでなく、オンライン被害、子ども同士の問題、メンタルヘルス、職員採用、記録管理へ広がっています。
英国教育省は「Keeping Children Safe in Education 2026」を公開していますが、2026年8月31日までは2025年版が現行であり、2026年版は9月1日から適用されます。新しいガイダンスでは、学校内施設の安全、メンタルヘルス支援、Safer Recruitmentなどが引き続き重視されています。
日本では、こども性暴力防止法が2026年12月25日に施行されます。対象となる学校・教育保育事業者には、従事者の性犯罪歴確認、相談窓口の整備、不適切な行為の調査、被害が疑われる子どもの保護などが求められます。
ただし、犯罪歴の確認だけで、すべての不適切行為を防げるわけではありません。
過去の記録がない人による問題や、犯罪には至らない境界線上の行動を早期に把握するためには、日常的な行動規範、研修、記録、相談体制が必要です。
口コミ・評判から見える保護者の不安
インターナショナルスクールに関するオンライン上の相談では、次のような不安が見られます。
- 教師の言動が厳しい指導なのか、不適切な対応なのか判断できない
- 子どもの話だけで学校へ連絡してよいか迷う
- 相談した後、学校がどのように調査したか分からない
- 学校側と関係の深い保護者や職員が関わると、公平に対応されるか不安
- 問題を伝えたことで、子どもが学校で不利益を受けないか心配
- 守秘義務を理由に、学校からほとんど説明を受けられない
実際に、教師が子どもの教材を投げたという話をどう受け止めるべきか悩む保護者や、問題行動を繰り返す生徒への学校対応が公平か疑問を持つ保護者の投稿があります。
これらは個別の投稿であり、学校全体の実態を示すものではありません。
一方で、保護者が求めているのは「すべての調査内容を公開してほしい」ということだけではなく、
- 相談を正式に受理したか
- 子どもの安全をどう確保するか
- 誰が調査を担当するか
- いつまでに次の連絡があるか
- 再発防止をどう行うか
という手続きの透明性であることが分かります。
学校見学・説明会で確認したい10項目
学校の安全体制を確認する際は、「安全対策は万全ですか?」という質問だけでは、具体的な違いが見えません。
次のように質問してみましょう。
- Safeguarding Policyを保護者も閲覧できますか
- Safeguarding責任者は誰ですか
- 責任者本人に関する相談はどこへ伝えますか
- 教職員の採用時に、どの国の犯罪歴を確認しますか
- 代替教員や外部コーチも身元確認を受けますか
- 教職員はどのくらいの頻度で研修を受けますか
- 生徒は相談方法を授業で学びますか
- 子ども同士の性的な言動やオンライン被害にどう対応しますか
- 保護者へ調査の進捗をどのように伝えますか
- 外部の児童相談所・警察・医療機関と連携する基準はありますか
英語では、次のように質問できます。
Who should a student or parent contact if they have a safeguarding concern?
セーフガーディング上の心配がある場合、生徒や保護者は誰へ連絡すればよいですか?
What background checks are required for teachers, volunteers and external activity providers?
教員、ボランティア、外部の活動提供者には、どのような身元確認が必要ですか?
How are parents informed after a safeguarding concern has been reported?
セーフガーディング上の懸念が報告された後、保護者にはどのように連絡されますか?
家庭でできる子どもの安全対策
学校に任せるだけでなく、家庭でも子どもが相談しやすい環境をつくることが大切です。
「嫌だったら断ってよい」と伝える
相手が先生、コーチ、年上の生徒であっても、不快な接触、秘密、個人的な連絡を断ってよいと伝えます。
話をすぐに否定しない
子どもが気になる話をしたときに、
「先生がそんなことをするはずがない」
「あなたにも原因があったんじゃない?」
とすぐに否定すると、その後話さなくなる可能性があります。
まずは「話してくれてありがとう」と伝え、子どもの言葉をそのまま聞きましょう。
誘導する質問を避ける
「先生にたたかれたの?」と結論を含む聞き方ではなく、
「そのとき何があったの?」
「その後どうしたの?」
と、子どもが自由に話せる質問をします。
日時と言葉を記録する
子どもから聞いた日付、状況、実際に使った言葉を記録します。
保護者の解釈と、子どもが話した内容を分けておくことが重要です。
学校の連絡先を保存する
Safeguarding担当者、校長、スクールカウンセラー、学校外の相談先をスマートフォンへ保存しておきましょう。
編集部の一言|「問題が起きない学校」より対応できる学校を選ぶ
学校説明会では、「これまで重大な問題は一度もありません」と説明される方が安心に感じるかもしれません。
しかし、大人数の子どもと大人が集まる以上、心配な行動や相談がまったく発生しないとは限りません。
編集部として重視したいのは、問題がゼロだと主張する学校よりも、
- 小さな違和感も報告できる
- 子どもの話を否定せず受け止める
- 利害関係のない担当者が確認する
- 必要に応じて外部機関へつなぐ
- 個人情報を守りながら保護者へ経過を説明する
- 調査後に仕組みを改善する
学校です。
また、厳格なルールだけでなく、子ども自身が「何かあったらこの人に話せる」と理解しているかも重要です。
Safeguarding Policyのページがあるかだけで判断せず、実際に誰へ相談し、どのような流れで対応されるのかまで確認しましょう。
よくある質問
セーフガーディングは、いじめ対策と同じですか?
いじめ対策はセーフガーディングの一部です。
セーフガーディングには、虐待、ネグレクト、性的被害、不適切な指導、オンライン被害、教職員の採用や研修なども含まれます。
保護者の勘違いだった場合、学校へ相談してもよいですか?
確証がなくても相談できます。
保護者が独自に調査したり相手へ直接問い詰めたりする前に、学校の担当者へ「子どもからこのような話を聞いた」と事実を伝えましょう。
学校は調査内容をすべて教えてくれますか?
ほかの子どもや教職員の個人情報、調査の公平性を守るため、すべての情報を共有できない場合があります。
一方で、自分の子どもの安全確保、今後の支援、次の連絡時期については確認しましょう。
CISやWASC認定校なら絶対に安全ですか?
認定は、学校のポリシーや運用を確認する一つの判断材料です。
ただし、認定だけで将来の問題が完全に防止されるわけではありません。相談窓口、研修、採用、通報、改善の仕組みを個別に確認してください。
おわりに
インターナショナルスクールのセーフガーディングは、事件が起きた後だけの対応ではありません。
子どもを守るためには、次の仕組みが必要です。
- 明確な責任者と相談窓口
- 教職員・外部スタッフの身元確認
- 大人と子どもの行動規範
- 全職員への継続的な研修
- 小さな懸念を記録・共有する仕組み
- 子どもが相談方法を学ぶ機会
- 警察・医療機関・児童相談所との連携
- 問題発生後の検証と改善
学校選びでは、防犯カメラや警備員の有無だけでなく、「子どもが誰に相談できるか」「問題が報告された後にどう動くか」まで確認しましょう。
家庭でも、日頃から子どもの話を否定せず、嫌なことは断ってよいと伝えておくことが大切です。
学校と家庭が同じ認識を持つことが、子どもが安心して学べる環境につながります。
皆さんのスクール選びの参考になれば幸いです!


