「子どもをフランスのインターに通わせたあと、日本の大学にも進めるのかな」「IBとフランスバカロレア、どちらを目指させればいいのか全然わからない」
こういう疑問、調べれば調べるほど情報が錯綜して頭がこんがらがる、というパターンはよくあります。
バカロレアという言葉ひとつとっても、フランスの国内制度としてのバカロレアと、世界共通の教育プログラムである国際バカロレア(IB)は完全に別の話です。この2つを混同したまま学校選びをしてしまうと、進路の選択肢を誤ることにもなりかねません。
この記事では、フランスのバカロレアとは何か、日本でIBを取得するルートとどう違うのか、フランス本国のインターで取得できる資格は何か、そして将来的に日本の大学も視野に入れている家庭はどう動けばいいのかを、整理していきます。
そもそもバカロレアとは何か、国際バカロレアとの違いから整理する

子どもをフランス系のインターナショナルスクールに通わせることを検討しているなら、まず最初に頭の中でしっかり切り分けてほしいことがあります。それが、フランスのバカロレアと国際バカロレア(IB)はまったく別の制度だという点です。同じバカロレアという言葉がついているので混同されやすいのですが、制度の成り立ちも目的も、取れる場所も異なります。ここを理解しないまま学校を選ぶと、入学後に気づいて後悔するケースが実際にあります。
フランスのバカロレアは、フランス国民教育省が管轄するフランス国内の高校卒業資格です。日本でいえば高校卒業証明書に近いものですが、単なる卒業証書とは違い、フランスの大学に入学するためには原則としてこのバカロレア取得が必須条件になっています。口語ではバック(BAC)と略されることが多く、フランスの高校生にとってはまさに人生を左右する試験です。合格率は年度や試験の種類によって異なりますが、おおむね80〜85%前後で推移しており、不合格になった場合は翌年再受験することができます。
一方、国際バカロレア(IB)は1968年にスイスのジュネーヴで設立された非政府組織が運営する国際的な教育プログラムです。2024年時点で世界160か国以上、約5,800校以上が認定校となっており、IBプログラムを通じて取得できるディプロマ資格(IBDP)は世界中の大学で大学入学資格として認められています。フランスのバカロレアがフランス国内の制度であるのに対し、IBはどの国の学校で取得しても世界共通の資格として扱われる点が大きく異なります。
フランスのバカロレアには3種類ある
フランスのバカロレアは一種類ではありません。フランスの高校(リセ)には大きく3つのタイプがあり、それぞれに対応したバカロレアが存在します。普通高校(リセ・ジェネラル)のバカロレアが最もよく知られており、文系・理系・社会科学系など複数のコースに分かれています。技術高校(リセ・テクノロジック)では技術系のバカロレア、職業高校(リセ・プロフェッショネル)では職業バカロレアが用意されており、フランスの大学進学を目指す場合は原則として普通バカロレアが求められることが多いです。子どもをフランスのインターナショナルスクールに通わせてフランス本国の大学進学を視野に入れる場合は、この普通バカロレアの取得ルートにいるかどうかを確認する必要があります。
なお、フランスの国内制度であるバカロレアは、フランス以外の国では大学入学資格として認められないケースが多いです。フランスの大学に進学するには最適な資格ですが、日本やアメリカ、イギリスの大学に出願する際には単体では通用しないことが多く、IBディプロマや各国の入学資格が別途必要になることがあります。フランスの普通バカロレアを持っていても、日本の大学入学資格として自動的に認められるわけではないという点は、あまり知られていない落とし穴なので覚えておいてください。
フランス本国のインターナショナルスクールで取れる資格の全体像

フランス国内にあるインターナショナルスクールでは、どんな資格が取れるのか。これは学校によって大きく異なります。大前提として、フランス国内のインターナショナルスクールは、フランスの公教育制度の外側にある教育機関として位置づけられているものがほとんどです。ただし在外フランス教育庁(AEFE)が認定・管轄するフランス系学校は、フランス国民教育省のカリキュラムを採用しているため、そのルートでフランスのバカロレアを目指せる学校も存在します。一方で、英語主体のインターナショナルスクールや、IBに特化した学校では、IBディプロマの取得を最終目標にしているケースが多くなっています。
子どもをフランス本国のインターに通わせる際に、最終的にどの資格を取らせたいかで選ぶべき学校が変わってきます。フランスの大学を目指すなら、AEFE傘下のフランス系インターでフランスバカロレアを目指すルートが最も直結しています。世界各国の大学を視野に入れるなら、IBディプロマを取得できるIB認定校を選ぶ方が幅が広がります。日本の大学も候補に残しておきたいなら、IBディプロマが日本の大学入学資格として認められているかどうかを確認したうえで、IB対応校を選ぶのが現実的な選択になります。
AEFE認定校とそれ以外のインターとの違い
フランスには在外フランス教育庁(AEFE)という機関があり、フランス国内外にあるフランス式教育を行う学校を認定・管轄しています。AEFEの認定を受けた学校では、フランス国民教育省のカリキュラムに基づいた授業が行われ、その課程を修了した生徒はフランスのバカロレアを受験・取得することができます。AEFEは2024年時点でフランス本国を含む世界140か国以上に500校を超えるネットワークを持っており、フランスの教育の継続性という観点では非常に強みのある制度です。パリ在住の日本人家庭がフランスのバカロレア取得を目指す場合は、このAEFE傘下の学校を選ぶことが一つの明確な選択肢になります。
一方で、フランス国内にあるIB認定のインターナショナルスクールは、AEFEとは別系統です。これらの学校はフランスのバカロレアではなくIBディプロマを最終目標として設定しており、授業言語も英語主体であることが多いです。フランスに住んでいながら英語環境でIBを取得するルートを選ぶ家庭も一定数おり、特に英語圏の大学や世界のトップ校を目指す場合にはこちらが選ばれる傾向があります。どちらが優れているという話ではなく、子どもの将来の進路と使う言語によって、どちらのルートが合うかが変わってきます。
📋 フランスと日本、バカロレア関連を整理するためのチェックリスト
- フランスのバカロレア(BAC)はフランス国内の高校卒業資格で、フランスの大学進学に必要
- 国際バカロレア(IB)は別組織が運営する世界共通の教育プログラムで、全く別の資格
- フランスのバカロレアは、日本の大学入学資格として自動的には認められない
- IBディプロマは日本の大学入学資格として文科省に認められている(2003年改正以降)
- AEFEの認定を受けた学校ではフランスバカロレアを目指せる
- IB認定のインターではIBディプロマを目指せる(フランスバカロレアとは別ルート)
- フランス本国の一部の学校ではバカロレアとIBの両方を提供しているケースもある
日本でバカロレアを取得する方法と、フランスで取る場合との違い

日本国内でIBディプロマを取得できるルートは、大きく2つあります。ひとつは文科省が定める一条校(日本の正規の学校)の中でIB認定を受けている高校に通うルートで、もうひとつは国内のIB認定インターナショナルスクールに通うルートです。2024年6月時点で日本国内のIB認定校・候補校は249校に達しており、年々増加しています。一条校でIBを取得した場合は日本の高校卒業資格とIBディプロマの両方を同時に取得できる点が大きな特徴で、国内の一般入試にも出願できる選択肢が残ります。
フランス本国のIB認定インターナショナルスクールでIBを取得する場合との最大の違いは、言語環境と日本の制度との関係性です。フランス国内のインターでIBを取得しても、それ自体は日本の大学入学資格として有効です。ただし授業がフランス語や英語で行われるため、日本語での学習機会が大幅に減ります。帰国後に日本の大学を受験する際、IBスコアを使った入試に出願できますが、日本語の学力が求められる科目や試験への対応は別途準備が必要になります。特に私立大学のIB入試では、TOEFLやIELTSなどの英語スコアを別途求めるケースもあり、IBスコアさえあれば完結するわけではない点に注意が必要です。
日本のフランス系インターでバカロレアを目指せるか
日本国内にもフランス系のインターナショナルスクールはいくつか存在しています。代表的なのが東京都北区に所在する東京国際フランス学園(Lycée français international de Tokyo)で、フランス国民教育省の認定を受けており、フランスのバカロレア取得を目指すことができます。1975年の開校以来、フランス教育省から正式に承認されており、AEFE(在外フランス教育庁)の直轄校として運営されています。2024年時点で55か国以上の国籍を持つ約1,500人が在籍しており、日本にいながらフランスの公教育と同じカリキュラムを受けられる環境が整っています。
ただし、この学校でフランスのバカロレアを取得しても、それが日本の大学入学資格として直接認められるわけではありません。前述のとおり、フランスのバカロレアは基本的にフランスの大学進学向けの資格であり、日本の大学を受験するためには別のルートが必要になります。東京国際フランス学園の卒業生が日本の大学を目指す場合は、高校卒業程度認定試験を経由するか、その学校がIBも提供している場合はIBスコアを活用する方法が現実的な選択肢になります。子どもの最終的な進路をどこに置くかで、日本にあるフランス系インターが最適解かどうかも変わってくるため、入学前にここをしっかり考えておくことが重要です。
フランスと日本、バカロレア取得ルートを進路別に考える

ここまでの話を踏まえて、子どもの進路ごとにどのバカロレア取得ルートが現実的かを整理してみます。ざっくりと3つのパターンに分けて考えると、頭の中が整理しやすくなります。
まず、フランスの大学への進学を最優先に考えている場合は、フランスのバカロレア取得が最も直結したルートです。フランス国内のAEFE傘下の学校、または日本にある東京国際フランス学園のようなAEFE認定校で、フランス教育省のカリキュラムに沿って学ぶのが王道のルートになります。フランスの名門グランゼコールを目指す場合は、バカロレア後にさらにクラス・プレパラトワールという準備課程を経る必要があり、競争はかなり厳しくなります。
次に、世界中の大学を幅広く視野に入れたい場合は、IB認定校でIBディプロマを取得するルートが最も汎用性が高いです。IBディプロマは160か国以上で大学入学資格として認められており、日本の早慶・ICU・上智など、IB入試枠を持つ国内大学への出願も可能です。フランスにいながらIBを取得するなら、IB認定を受けているインターナショナルスクールを選ぶことになります。フランス本国には一部、フランスのバカロレアとIBの両方のコースを持つ学校もあるため、どちらの選択肢も残しておきたい場合はそうした学校を探してみる価値があります。
3つ目のパターンとして、最終的に日本に戻って大学受験をする可能性が残っている場合は、IBディプロマを取得しつつ日本語学習を継続するルートが現実的です。IBスコアを使って日本の大学のIB入試枠に出願できますが、大学によっては出願条件に英語スコアや日本語の学力が求められることもあります。フランスのバカロレアだけでは日本の大学入学資格にならないため、このパターンではIBとセットで動くことが必須になります。
子どもが小学生の段階からできる準備
バカロレアの取得ルートは高校段階の話ですが、どのルートを選ぶかは実は小学校段階の学校選びから影響してきます。IBには年齢別に4つのプログラムがあり、3歳から12歳を対象としたPYP(初等教育プログラム)、11歳から16歳のMYP(中等教育プログラム)、そして16歳から19歳のDPがIBディプロマの取得につながります。PYP→MYP→DPと一貫してIBカリキュラムで学んできた子どもは、DPの段階での適応がスムーズになりやすいといわれています。ただし、PYPやMYPを履修していなくても、高校段階からDPに参加することは制度上可能です。
フランスのバカロレアルートでも同様に、フランス教育省のカリキュラムに沿った初等・中等教育を継続的に受けていることが前提になります。途中から日本の学校に通っていた子どもがいきなりフランスのバカロレアコースに入るのは、言語面でも学力面でも相当なハードルがあります。どちらのルートを選ぶにしても、できれば子どもが小さい段階からそのルートに乗った環境に置くことが、後々の負担を減らすうえで大事な判断になります。
日本の大学受験でIBスコアを使う際の具体的な注意点

フランスのインターや日本国内のIB認定インターでIBディプロマを取得したあと、日本の大学に進学するルートを選ぶ場合に知っておくべきことがいくつかあります。まず前提として、IBディプロマは2003年の文部科学省の改正により日本の大学入学資格として認められています。ただし、自動的にすべての大学に出願できるわけではなく、各大学がIB入試枠を個別に設けているかどうかによって状況が異なります。
IB入試枠を持つ国内大学としては、早稲田大学・慶應義塾大学・上智大学・国際基督教大学(ICU)などが広く知られており、東京大学や京都大学もIBスコアを評価する枠組みを持っています。ただし、各大学が求めるIBのスコアラインは異なります。たとえば難関国立大学のIB入試では、45点満点中38点以上を求めるケースもあり、IBのDPで高得点を取ること自体がすでに相当な学力を必要とします。合格率は7割前後ともいわれていますが、難関校を狙う場合は上位1〜2割程度のスコアが必要になると考えておく必要があります。
IB入試と並行して日本語力をどう維持するか
フランスのインターでIBを取得してから日本の大学を目指す場合、実務的に最も頭を悩ませるのが日本語力の問題です。フランスのインターに数年通うと、授業はフランス語か英語になるため日本語の読み書きに触れる機会が大きく減ります。帰国後に日本語の論文や小論文が求められる試験に直面したとき、語彙力や文章力が追いついていないというケースは実際に起きています。IBのスコアだけで日本の大学が決まるわけではなく、大学によっては面接や小論文、日本語の科目テストを課す場合もあるため、フランス滞在中から日本語の読書習慣を維持したり、日本語補習校を活用したりする家庭内での工夫が欠かせません。
フランスにある日本語補習校(在仏日本語補習授業校)はパリを中心にいくつか存在しており、土曜日に日本のカリキュラムで国語や算数などを学ぶことができます。インターに通いながら週1回補習校に通うという組み合わせを選ぶ日本人家庭は一定数います。負担は増えますが、日本語力の維持という観点では有効な手段です。フランスでのインター生活と日本語教育の両立は、子どもの体力・時間・モチベーション次第でもあるため、無理なく続けられるペースを親が見極めて動くことが大切です。




