子どもの進学先を考えるとき、多くの家庭がまず調べるのは学費や通学距離ですが、同じくらい重要なのが「教育方針の違い」です。特にインターナショナルスクールは、日本の小中高と比べて学びのスタイルも生活環境も大きく異なるため、強みと弱みをしっかり理解しておく必要があります。
英語力が自然に身につくのは確かに魅力ですが、「日本語力が弱くなってしまうのでは」「日本の大学受験に対応できるのか」という不安も同時に浮かんできます。逆に日本の学校は安心感はあるものの、「国際的な舞台で活躍できるのか」「表現力が不足するのでは」といった懸念も出てきます。
この記事では、インターナショナルスクールと日本の学校を比較しながら、それぞれの強みと弱みを整理します。授業内容、進路、費用、文化環境まで幅広くカバーし、親御さんが自分の子どもにとって最適な環境を考える手がかりを提供します。
インターナショナルスクールの強みとは?

インターナショナルスクールの大きな魅力は「国際的な環境で学べること」に尽きます。ただし、その中にもいくつかの柱があります。
- 英語環境での学習
- 多文化環境で育つ
- 探究型の学び
- 海外大学進学へのスムーズな道
それぞれ解説します。
英語環境での学習
最大のメリットは、英語が日常生活そのものになることです。授業はもちろん、休み時間の会話やクラブ活動まで英語で進むため、自然と語学力が伸びます。英語を「科目」として学ぶのではなく「生活のツール」として使うため、習得スピードも早く、発音やリスニングも自然に育ちやすいのです。
例えば、日本の学校で週に数回の英語授業を受けている子と比べると、インターナショナルスクールの子どもは1日何時間も英語を使うことになり、圧倒的な学習量の差が生まれます。これが将来の海外大学進学や国際的な職業選択の幅を広げる大きな強みになります。
多文化環境で育つ
多国籍の子どもたちが集まるため、文化の違いを日常的に体験できます。友人とのランチやイベントを通じて、宗教や習慣の違いを自然に学ぶことができます。例えば「ベジタリアンの友達がいるから料理をシェアするときに工夫する」「ラマダンを経験している友達の生活を知る」といった経験は、日本の学校ではなかなか得られないものです。
こうした日常は「違いを認めることが当たり前」という感覚を育み、国際的な場で求められる協調性や柔軟性を磨きます。
探究型の学び
宿題や授業スタイルも大きく異なります。日本の学校が知識定着を重視する一方で、インターナショナルスクールは「調べる・考える・発表する」を重視します。ディスカッションやプレゼンが頻繁にあり、宿題もリサーチやエッセイ、グループワークが中心です。
この環境では「自分の意見を持ち、それを相手に伝える力」が自然に育ちます。これは将来の社会で非常に重要なスキルであり、学校生活を通して日常的に練習できるのは大きな強みです。
海外大学進学へのスムーズな道
アメリカ式やイギリス式のカリキュラム、国際バカロレア(IB)を導入している学校では、そのまま海外大学への進学がスムーズにできます。SATやTOEFLなどの試験対策も授業に組み込まれている場合が多く、日本の学校から海外大学を目指すよりも準備が効率的です。
インターナショナルスクールの弱みとは?

もちろん、強みだけではありません。親御さんがあらかじめ理解しておくべき弱点もあります。
- 学費が高額
- 日本語力の不足
- 日本の受験制度に不利
- 文化的ギャップ
それぞれ解説します。
学費が高額
年間200万〜300万円以上が相場で、さらに教材費やスクールバス代、行事費が加わります。高校まで通うとなると、合計で数千万円単位の費用が必要です。教育費をどのように確保するかは、インターナショナルスクールを検討する家庭にとって避けて通れない課題です。
日本語力の不足
英語環境に浸かる一方で、日本語の読み書きが十分に育たない場合があります。特に漢字や作文力は家庭での補強が欠かせません。「英語は得意だけれど、日本語の長文を書くのは苦手」という子どもが少なくないのです。日本での進学や就職を考えたとき、この弱みをどう補うかは重要なポイントです。
日本の受験制度に不利
インターナショナルスクールから日本の一般入試を受ける場合、日本語での高度な学力試験に対応する必要があります。英語力を活かせるAO入試や帰国生入試もありますが、選択肢は限定的です。国内の大学進学を見据える家庭は、塾や通信教育での補強が不可欠です。
文化的ギャップ
自由度が高いため、日本社会に出たときに「ルールを守る文化」とのギャップを感じる子もいます。主体性を重視する教育は素晴らしい反面、日本特有の「集団行動の暗黙ルール」に馴染みにくくなるリスクもあるのです。
日本の学校の強みと弱みとは?

次に、日本の小中高の特徴を整理します。
日本の学校の強み
日本の学校の大きな強みは、基礎学力の徹底です。漢字ドリル、計算プリント、反復練習を通じて「読み書き算」の土台を確実に作ります。さらに、給食制度や掃除の時間、部活動など、生活習慣や協働性を育む仕組みも整っています。
学費が低い点も魅力です。公立校なら費用を最小限に抑えられるため、塾や習い事に投資しやすいのも強みです。
日本の学校の弱み
一方で、表現力や批判的思考を育てる機会は少なめです。授業は先生主導で進み、生徒が自分の意見を述べたり議論したりする場面は限られます。英語教育も依然として「テスト対策」が中心で、実際に使える力が十分に育たないケースが多いです。
親が考えるべき視点

両者を比較すると一長一短があります。では、親はどのように判断すればよいのでしょうか。
子どもの将来像をイメージする
海外大学進学や国際的な仕事を視野に入れるなら、インターナショナルスクールは有力な選択肢です。逆に日本の大学進学や国内での就職を前提とするなら、日本の学校の方が適しています。大切なのは「子どもにどんな未来を歩んでほしいか」を具体的に描くことです。
家庭で補う姿勢
どちらを選んでも、弱みを補う意識は欠かせません。インターナショナルスクールなら日本語教育を家庭で支える、日本の学校なら表現力や英語力を塾や家庭学習で伸ばす。このバランス感覚が将来の力になります。
経済的な持続可能性
教育は長期戦です。インターナショナルスクールの学費を無理に負担し続けると、大学進学や留学費用に影響が出る可能性もあります。日本の学校でも、塾や習い事に多くの費用がかかるケースがあり、全体の家計バランスを見て判断することが大切です。
まとめ

インターナショナルスクールと日本の学校には、それぞれに強みと弱みがあります。
- インターナショナルスクールの強みは、英語環境、多文化理解、探究型学習、海外進学のしやすさ。
- 弱みは、学費、日本語力の不足、日本受験への不利、文化的ギャップ。
- 日本の学校の強みは、基礎学力の定着、生活習慣の育成、学費の負担の軽さ。
- 弱みは、表現力や批判的思考の不足、英語力の限界。
どちらが「正解」ではなく、家庭ごとの方針や子どもの将来像に合わせて選ぶことが大切です。最終的には、学校見学や在校生の声を参考にしながら「この環境なら子どもが伸び伸びと学べる」と感じられるかどうかが判断の決め手になります。