インターナショナルスクールという選択肢は、ここ数年で日本国内でも注目を集めるようになってきました。グローバル化の進展や海外大学進学の視野拡大、さらには「早くから英語に触れさせたい」という親御さんの思いが重なり、首都圏を中心に入学希望者は増え続けています。
ただ、その一方で一番気になるのはやはり費用です。入学案内を見ると、年間で数百万円という数字が並んでおり「これは公立小学校と比べていったいどれくらい高いのだろう」と戸惑う声もよく耳にします。学費が高いのは分かっていても、実際にどのくらい差があるのかを具体的にイメージできないと、家庭としての計画も立てにくいものです。
この記事では、公立小学校にかかる費用とインターナショナルスクールの学費を比較しながら、実際に6年間、あるいは12年間通った場合のシミュレーションを行います。数字を並べるだけでなく「どんな価値がその費用に含まれているのか」まで整理することで、親御さんにとって納得感のある判断材料を提供することを目指します。
公立小学校にかかる費用の現実

インターナショナルスクールとの比較をするためには、まず基準となる公立小学校の費用を正しく把握しておく必要があります。日本では義務教育のため授業料が無料とされていますが、それは「教室での授業にかかる直接的な費用」を国が負担しているにすぎません。実際に子どもを小学校に通わせると、給食費や学用品、行事費など、さまざまな支出が発生します。
授業料が無料でも必要な費用
授業料はかかりませんが、毎日の学校生活にはお金が必要です。代表的なのが給食費で、自治体によって差はあるものの年間5万〜6万円ほどかかります。さらに副教材費として漢字ドリルや自由研究用の教材などがあり、こちらも数千円から1万円程度。美術や家庭科の材料費、音楽のリコーダー代なども含めると、学期ごとに小さな出費が続きます。こうした費用は「ちょっとしたものだから」と見過ごされがちですが、積み重なれば家計に無視できない金額となります。
学用品や通学関連の出費
入学時にはランドセル、学習机、文房具一式、体操服などで10万円以上が必要になるケースが多いです。中には制服が指定されている学校もあり、その場合はさらに数万円が加算されます。学年が進むと習字道具や裁縫セット、リコーダー、修学旅行の積立金などが追加され、学年ごとに一定の出費が発生します。通学に必要な交通費は公立校ではあまり大きくありませんが、電車やバスを利用する場合は年間数万円になることもあります。
年間の目安
文部科学省が公表しているデータでは、公立小学校に通う子ども一人あたりの学校教育費と学校外活動費を合計すると、年間でおよそ30万円前後となっています。6年間で約180万円という数字は、義務教育の保障のありがたさを感じさせます。もちろん、習い事や塾に通わせればさらに上乗せになりますが、それでも授業料が無料であることを考えると、公立校は比較的家計にやさしい教育環境であるといえるでしょう。
インターナショナルスクールにかかる学費の構造とは?

公立小学校と比べると、インターナショナルスクールの学費は桁違いに感じられるかもしれません。ただし、なぜここまでの費用がかかるのかを理解することは重要です。単なる「高い学校」というイメージではなく、費用の中にどのようなサービスや価値が含まれているのかを知ることで、納得感を持って判断できるようになります。
入学金と施設費
入学時に必要となる入学金は、学校ごとに大きく差があります。安いところで20万円前後、高いところでは100万円近くに及びます。これは「学校への登録料」ともいえるもので、一度支払えば追加で請求されることはありません。さらに、施設維持費として毎年5万円から30万円程度が必要なケースもあります。これは図書館や体育館、理科実験室などを維持するための費用で、充実した教育環境を支えるために欠かせないものです。
授業料の目安
授業料は年間150万円から300万円が相場です。プリスクール段階では150万円前後でも、小学校に上がると200〜250万円、中等部では300万円以上、高等部になると400万円に届くこともあります。この金額には授業そのもののほかに、少人数制の指導やネイティブ教員の人件費、国際的なカリキュラム維持のコストが含まれています。ひとことで言うと「国際基準の教育を維持するための必要経費」です。
その他の費用
制服代や教材費、スクールバス代も別途必要になります。特にインターナショナルスクールではアートやスポーツ、探究学習が盛んで、そのための活動費や道具代がかかるのが一般的です。さらに海外研修やサマープログラムが組み込まれている学校では、一回の参加で数十万円単位の費用がかかることも珍しくありません。
公立とインターナショナルスクールの比較シミュレーション

ここまでで公立小学校とインターナショナルスクールの費用構造を整理しました。次に、実際に数字を並べて比較してみましょう。こうすることで、どれほどの差があるのかを肌で感じられるはずです。
一年間の費用比較
- 公立小学校:約30万円
- インターナショナルスクール:200万〜300万円
この時点で、公立小の7倍から10倍程度という大きな差が生まれます。数字だけを見ると驚きますが、ここには教育の質や環境の違いが含まれていることを忘れてはいけません。
6年間の費用比較
小学校6年間で計算すると、公立小学校は約180万円。一方インターナショナルスクールでは1200万円から1800万円に及びます。これは一戸建て住宅の頭金や、自家用車を数台購入できる規模に相当し、まさに家庭にとって大きなライフイベント級の出費です。
家計シミュレーションのポイント
こうした数字を見ると「現実的に難しい」と感じる方もいるでしょう。しかし実際には、奨学金や兄弟割引、企業からの補助などを活用することで負担を軽減できる場合もあります。シミュレーションをする際には単に金額を比較するのではなく「我が家にとって現実的に続けられるかどうか」を冷静に判断することが大切です。
学費に見合う価値をどう考えるか

費用の差は明らかに大きいですが、インターナショナルスクールが高額であるのには理由があります。その価値をどう捉えるかが、公立と比較する際の重要な視点です。
英語力と国際感覚
インターナショナルスクールでは、日常的に英語で授業や会話が行われます。これは単なる語学学習を超えて「英語で考える力」を育む環境です。さらに世界中から集まった同級生と交流することで、多様性を自然に理解し、国際感覚を養うことができます。公立小では得にくい経験が、日常生活の中に組み込まれているのです。
教育スタイルの違い
日本の公立校は基礎学力を全員に保障することを目的としています。一方でインターナショナルスクールは、探究心や表現力、プレゼンテーション能力を伸ばすことに重点を置きます。たとえばディスカッション中心の授業やプロジェクト型学習は、その代表例です。これらは将来的に海外大学進学やグローバル企業での活躍に直結するスキルとなります。
家庭にとっての選択肢
インターナショナルスクールを選ぶか、公立校を選ぶかは「どちらが良い悪い」という単純な問題ではありません。家庭がどのような教育方針を持ち、子どもにどのような環境を与えたいかによって答えは変わります。費用をシミュレーションしたうえで「この投資に納得できるか」を考えることが、最終的に満足のいく選択につながります。
インターナショナルスクールと公立小学校の費用を比べると、その差は年間で数倍、6年間で数百万円単位に広がります。確かに大きな負担ですが、同時に得られる環境や学びの価値も公立校とは大きく異なります。重要なのは金額そのものではなく「家庭にとって現実的に支払えるか」「その費用を将来への投資と捉えられるか」という点です。情報を集め、シミュレーションを通じて具体的に考えることで、親御さんにとって納得感のある選択が見えてくるはずです。