「外国人教員が2〜3年で退職するのは、学校に問題があるから?」
「教員離職率や平均勤続年数は、学校へ聞いてもよい?」
インターナショナルスクールの学校見学や保護者の口コミでは、「先生の入れ替わりが多い」という話が出ることがあります。
海外から来た教員が一定期間で帰国したり、別の国の学校へ移ったりすることは、国際教育の世界では珍しくありません。
一方、毎年多数の先生が辞める、年度途中の退職が繰り返される、校長やカリキュラム責任者まで頻繁に交代するといった状況には注意が必要です。
教員の入れ替わりが続くと、子どもと教師の関係だけでなく、カリキュラム、成績評価、学習支援、進路指導などの継続性にも影響する可能性があります。
ただし、離職率が低ければ必ずよい学校というわけでもありません。
新しい専門性を持つ教員を採用したり、学校の規模拡大に合わせてチームを再編したりする、前向きな人事異動もあります。
この記事では、インターナショナルスクールの教員離職率の考え方、先生が退職する理由、学校比較で確認したいポイントを解説します。
教員離職率とは?
教員離職率とは、一定期間に学校を離れた教員の割合です。
一般的には、次のような計算で求めます。
教員離職率=期間中に退職した教員数÷教員数×100
たとえば、40人の教員がいる学校で、1年間に6人が退職した場合は次のとおりです。
6人÷40人×100=15%
ただし、学校によって計算方法が異なる可能性があります。
- 年度初めの教員数を使う
- 年度内の平均教員数を使う
- 常勤教員だけを数える
- 非常勤・代替教員も含める
- 契約満了者を退職者に含める
- 校内で部署異動した教員を含める
そのため、学校同士の数字を比較する場合は、計算対象を確認する必要があります。
離職率と平均勤続年数は違う
教員の安定性を見る数字には、離職率のほかに平均勤続年数があります。
| 指標 | 分かること | 注意点 |
|---|---|---|
| 年間離職率 | 1年間に何人が学校を離れたか | 単年度の事情に左右される |
| 平均勤続年数 | 現在の教員が平均何年勤務しているか | 一部の長期勤務者が平均を上げる |
| 中央勤続年数 | 教員の中央に当たる勤務年数 | 公開している学校は少ない |
| 年度途中の退職数 | 学期途中で何人が退職したか | 授業への影響を把握しやすい |
| 管理職の在任期間 | 校長・部門長が何年在籍しているか | 学校方針の継続性に関わる |
たとえば、平均勤続年数が6年でも、20年以上勤務する教員が数人いて、ほかの教員の多くが2年で辞めている可能性があります。
反対に、新設校や急成長中の学校では、新しく採用した教員が多いため、平均勤続年数が短くなるのは自然です。
数字を一つだけ見るのではなく、複数の指標を組み合わせましょう。
インターナショナルスクールでは先生が短期間で移動しやすい?
インターナショナルスクールの教員には、国外から期間を区切って採用されるForeign-hire Teacherが多くいます。
契約期間の終了後に、別の国へ移る、母国へ帰る、家族の都合で退職することもあります。
ISC Researchが世界59か国の国際校教員2,539人を対象に実施した調査では、回答者の約半数が、現在の学校を1〜6年以内に離れる予定だと答えています。主な動機として、別の場所でのキャリア向上や専門能力開発の機会が挙げられました。これは実際の離職率ではなく、教員の将来計画を調べた結果ですが、国際校教員の移動性の高さを理解する材料になります。
過去に中東・南アジア地域の国際校22校を調べた研究では、年間の平均教員離職率は17%でした。ただし、離職率ゼロの学校から60%の学校まで大きな差があり、調査地域と時期も限定されています。現在の日本国内インターナショナルスクールの適正値として、そのまま使うことはできません。
つまり、「インターナショナルスクールだから先生が辞めるのは当然」と考えるのも、「数人辞めたから問題校」と判断するのも適切ではありません。
先生が退職する主な理由
契約満了と海外移動
国際校では、最初に2〜3年程度の契約を結び、終了時に更新するかを判断する場合があります。
ASIJでは、教員の最初の契約期間を3年とし、その後は年ごとに更新する仕組みを公開しています。
契約満了による退職は、学校への不満が原因とは限りません。
新しい国で働きたい、配偶者の仕事に合わせたい、母国へ帰りたいなど、国際校特有の事情があります。
給与・住宅・生活費
国外採用の教員にとっては、給与だけでなく、住宅補助、医療保険、航空券、退職金、子どもの学費、為替、現地の生活費も重要です。
同じ給与額でも、家賃や物価が上がれば実質的な待遇が悪化し、別の学校へ移る理由になることがあります。
業務量とウェルビーイング
授業以外に、課題の採点、保護者対応、部活動、校外学習、カリキュラム作成、IB関連業務などが重なると、教員の負担が大きくなります。
ISC Researchは、重い業務量、限られた資源、専門的な支援の不足が教員のウェルビーイングと定着に関係すると説明しています。
校長や管理職との関係
教員が学校へ残るかを判断するうえでは、管理職の支援、意思決定の透明性、教員の意見が尊重されるかも重要です。
国際校を対象にした研究では、校長から支援されているという教員の認識が、定着と強く関係していました。
キャリアアップと研修機会
IB研修、大学院進学、リーダー職への昇進など、成長機会を求めて転職する教員もいます。
ISC Researchの調査でも、Professional Developmentは国際校教員が重視する要素の一つでした。CISも、優れた教員を定着させるには、継続的な研修、教員の裁量、協働、ウェルビーイングへの支援が必要だとしています。
離職率が高い学校は避けるべき?
高い離職率が続く場合は注意が必要ですが、数字だけで判断してはいけません。
次の違いを確認しましょう。
比較的心配が少ない退職
- 契約満了後の計画的な退職
- 帰国や家族事情による退職
- 定年退職
- 学校拡大に伴うチーム再編
- 年度末に後任へ十分引き継いでいる
- 採用予定と後任者を早めに説明している
注意したい退職
- 年度途中の退職が繰り返される
- 担任が同じ年度に何度も変わる
- 退職理由や後任について説明がない
- 教員だけでなく校長・部門長も頻繁に交代する
- 求人が年間を通して大量に出ている
- 無資格・未経験の代替教員が長期間担当する
- IB・Learning Supportなど専門職が空席のまま
- 引き継ぎがなく、成績や支援内容がリセットされる
離職率の高さよりも、計画的な人事異動か、学校運営の問題による突然の離脱かを見ることが重要です。
教員の入れ替わりは子どもにどう影響する?
教師との信頼関係を作り直す必要がある
幼児や小学生にとって、担任は毎日の安心感を支える存在です。
慣れた先生が突然いなくなると、不安、登校しぶり、集中力の低下などが見られる場合があります。
授業方法や評価基準が変わる
同じカリキュラムでも、教師によって課題、フィードバック、授業の進め方には違いがあります。
途中で担当者が変わると、前の先生と新しい先生で成績評価の基準が異なるように感じる可能性があります。
個別支援の引き継ぎが必要になる
EAL、Learning Support、ギフテッド、健康上の配慮などがある子どもは、担当教員が把握していた細かな情報を新しい先生へ引き継ぐ必要があります。
支援計画が教師個人の記憶だけに頼っている学校では、担当者の退職によって支援が途切れる可能性があります。
IB・大学出願への影響
IB Diplomaでは、Internal Assessment、Extended Essay、Predicted Gradesなどで、担当教師やコーディネーターとの継続的な関わりが重要です。
高校生では、大学出願用の推薦状を依頼する予定だった教師が退職する可能性もあります。
学校全体の連携が弱くなる可能性
教員の入れ替わりが多いと、カリキュラムの経緯、過去の生徒情報、学校独自の指導方法などのInstitutional Knowledgeが失われる可能性があります。
米国の学校を対象にした研究では、教員交代は交代した教師の質だけでなく、学年チーム全体の連携を乱すことを通じて、学力へ影響する可能性が示されています。ただし、これは米国公立校の研究であり、日本の国際校へそのまま当てはめることはできません。
教員が長く働ける学校の特徴
教員の定着率は、給与だけで決まるものではありません。
CISは、教員が価値を認められ、意見を伝えられる文化、専門能力開発、同僚との協働、経験豊富な管理職、ウェルビーイングへの配慮を、質の高い学校運営の要素として挙げています。
継続的な研修がある
NISでは、水曜日の午後などを使い、カリキュラム、セーフガーディング、ウェルビーイングなどに関する教員研修やチーム協議を行っています。
ASIJも、校内のLearning Officeを中心に、教員のニーズに応じた専門能力開発や、継続的なフィードバックを行う体制を公開しています。
新任教員への生活支援がある
海外から来る教員は、授業準備と同時に、住居、銀行、医療、在留手続き、日本での生活へ適応しなければなりません。
YISでは、新任教員同士のつながりを支えるNew Teacher Coordinatorや、研修・会議などに利用できる専門能力開発費を用意しています。
平均勤続年数を公開している
YISは、教員の平均勤続年数を6.6年と公開しています。平均勤続年数だけで学校の質は決まりませんが、教員の安定性を確認できる具体的な情報の一つです。
教員が学校運営に参加できる
授業やカリキュラムに関する意思決定へ教員が参加できる学校では、現場と管理職の認識を合わせやすくなります。
教員の意見が聞かれない、方針が頻繁に変わる、変更理由が説明されない環境では、定着が難しくなる可能性があります。
最新トピック|国際校の採用競争が厳しくなっている
COBISが2024〜25年度について実施し、2026年1月に発表した調査では、回答校の89%が、必要な質を持つ教員の採用を「やや難しい」または「非常に難しい」と答えました。
また、授業を補うために研修中の教員を利用する学校は45%、Teaching Assistantが授業を代行する学校は35%に増加しています。
ISC Researchも、国際校市場が成長した場合、2028年までに世界で最大15万8,400人の追加教員が必要になる可能性を示しています。
これらは、日本国内の各学校で教員不足が起きていることを直接示す数字ではありません。
一方で、今後は「先生が辞めた後に、同等以上の資格・経験を持つ後任を採用できるか」が、より重要な学校比較の視点になるでしょう。
口コミ・評判から見える保護者の悩み
学校の教員交代に関する保護者・教員のオンライン投稿では、次のような悩みが見られます。
- 数年間、毎年のように担任が変わっている
- 子どもが好きだった先生の退職理由が説明されない
- 多数の退職者が出ているが、学校は通常の人事異動と説明している
- 新任教員ばかりで、学校の仕組みを知る人が少ない
- 年度途中に先生が辞め、代替教員が長期間担当している
- 先生が変わるたび、子どもの特性を説明し直している
保護者向け掲示板では、毎年多くの教員が入れ替わる学校を「通常の状況なのか、学校固有の問題なのか」と不安に感じる投稿があります。国際校教員のコミュニティでも、離職率が高い学校で管理職がどう対応すべきかという議論が見られます。
これらは個別の体験談であり、特定の学校全体の実態を示すものではありません。
ただし、保護者が不安を感じるのは、先生が辞めること自体よりも、
- 退職が突然知らされる
- 後任者が決まっていない
- 子どもへの説明がない
- 引き継ぎ方法が見えない
場合が多いと考えられます。
学校見学で確認したい10項目
「離職率は何%ですか」と聞くだけでは、学校の状態を正確に判断できません。
次の項目を組み合わせて確認しましょう。
- 教員の平均勤続年数
- 過去3年間の年間離職率
- 年度途中に退職した教員数
- 校長・部門長の在任期間
- 最初の教員契約期間
- 空席が出た場合の採用基準
- 長期代替教員の資格と経験
- 新任教員への研修・生活支援
- 退職教員から後任への引き継ぎ方法
- 子どもの支援記録を組織として管理しているか
英語では、次のように質問できます。
What is the average length of service for teaching staff?
教員の平均勤続年数はどのくらいですか?
How many teachers left during the previous academic year, including mid-year departures?
前年度は、年度途中の退職を含めて何人の教員が退職しましたか?
How does the school ensure continuity when a teacher leaves?
教員が退職した場合、授業や支援の継続性をどのように確保しますか?
What induction and professional development are provided to new teachers?
新任教員には、どのような導入研修と専門能力開発を提供していますか?
具体的な数字を答えられない場合でも、退職理由の傾向、採用時期、引き継ぎ方法を説明できるか確認しましょう。
担任が年度途中で退職したら確認すること
先生の退職が発表された場合は、感情的に理由を追及するだけでなく、子どもの学校生活について具体的に確認しましょう。
後任者について
- 後任はいつ着任するか
- 正式な担任か代替教員か
- 教員資格と経験
- 同じカリキュラムの指導経験
- 引き継ぎ期間があるか
学習について
- 年間計画はそのまま継続するか
- 課題と成績は引き継がれるか
- 未採点の提出物を誰が評価するか
- 保護者面談は誰が担当するか
- 個別の学習目標は共有されているか
子どものケアについて
- 子どもへどのように説明するか
- お別れの機会があるか
- 新しい先生との移行期間があるか
- 不安が強い場合に誰へ相談するか
- スクールカウンセラーの支援があるか
CISは、退職する教員だけでなく、学校に残る生徒や同僚も変化の影響を受けるとして、退職を認識し、話を聞き、移行を支援する必要性を示しています。
家庭でできること
担任だけに情報を集中させない
健康、アレルギー、Learning Support、EAL、友人関係など、重要な情報は担任だけでなく、学校の正式な記録にも残してもらいましょう。
毎年の学習記録を保存する
- Report Card
- 教師コメント
- 個別支援計画
- 面談記録
- 課題の評価
- 学習目標
- 推薦状
- 標準テストの結果
を家庭でも保存します。
担当教員が退職しても、子どもの学習歴を次の先生へ説明しやすくなります。
子どもの前で退職理由を決めつけない
学校から詳しい理由が発表されていない場合に、
「学校と揉めたに違いない」
「悪い先生だったんだ」
などと決めつけると、子どもの不安を強める可能性があります。
「先生が学校を離れることになったけれど、あなたの学習が続くように学校へ確認しよう」と伝えましょう。
新しい先生との面談を依頼する
必要な支援がある場合は、着任後早い段階で面談を行います。
前の先生と同じ方法を求めるのではなく、これまで効果があった支援と、現在困っていることを共有しましょう。
編集部の一言|見るべきは「辞めた人数」より学校の反応
インターナショナルスクールでは、国をまたいで働く教員が多いため、一定の人事異動は避けられません。
毎年数人の退職者がいることだけで、学校の質が低いとは判断できません。
編集部として重視したいのは、先生が辞めたときに学校がどのように対応するかです。
- 保護者へ早めに説明する
- 資格と経験のある後任を採用する
- 授業・成績・個別支援を引き継ぐ
- 子どもの感情面を支える
- 退職理由の傾向を分析する
- 教員が長く働ける環境を改善する
このような対応がある学校なら、避けられない人事異動があっても、教育の継続性を守りやすくなります。
反対に、離職率が非公開であることよりも、質問に対して説明を避ける、年度途中の退職が繰り返される、後任が長期間決まらない状況に注意しましょう。
よくある質問
教員離職率は何%なら高いですか?
すべてのインターナショナルスクールに共通する基準はありません。
学校の規模、開校年数、契約期間、拡大状況などによって異なります。単年度ではなく、過去3年程度の傾向と年度途中の退職数を確認しましょう。
先生が2〜3年で辞めるのは普通ですか?
国外採用の教員では、契約終了を機に別の国へ移ることがあります。
ただし、ほとんどの教員が最初の契約で辞める、年度途中の退職が多い場合は、学校の支援や管理体制も確認した方がよいでしょう。
平均勤続年数が長ければ安心ですか?
重要な判断材料ですが、それだけでは十分ではありません。
教員資格、研修、評価制度、新しい教育方法への対応、子どもとの関係なども確認してください。
退職理由を学校へ聞いてもよいですか?
質問することはできますが、個人情報のため、学校が詳細を説明できない場合があります。
理由そのものより、後任者、引き継ぎ、子どもへの支援を具体的に確認しましょう。
校長が頻繁に変わる学校は問題ですか?
必ずしも問題とは限りませんが、学校方針、カリキュラム、教員採用などへ大きな影響を与える可能性があります。
過去数年間の校長交代と、学校の戦略がどのように継続されているかを確認しましょう。
おわりに
インターナショナルスクールでは、契約満了、帰国、家族事情、キャリアアップなどを理由に、教員が別の国や学校へ移ることがあります。
そのため、先生が入れ替わること自体は、必ずしも学校の問題を意味しません。
学校選びでは、次の点を確認しましょう。
- 過去数年間の教員離職率
- 教員の平均勤続年数
- 年度途中の退職者数
- 校長・部門長の在任期間
- 後任教員の採用基準
- 新任教員への研修
- 教員の専門能力開発
- 授業・成績・個別支援の引き継ぎ
- 保護者と子どもへの説明方法
- 退職後の学校改善
離職率が低いかどうかだけでなく、教員が安心して成長できる学校か、退職が起きても子どもの学びを継続できる組織かを見ることが大切です。
学校説明会では、教員の国籍や資格だけでなく、どのくらい長く働いているか、なぜ教員が学校へ残るのかまで質問してみましょう。
皆さんのスクール選びの参考になれば幸いです!


