「英語が聞き取れなかったら迷惑をかける気がする」「子どもが困っても、親は助けに行けないのが心配」
こうした不安は、ホームステイを考えるほとんどの学生・保護者が一度は抱えるものです。ネットで体験談を見てもポジティブな話とトラブルの話が入り混じっていて、何を信じればいいのか分からなくなってしまうこともあります。
ただ、実際のトラブルの多くは知っていれば防げるもので、事前準備や最初のコミュニケーションでかなり減らせます。ここでは、実際に起きやすい事例や背景を整理しつつ、学生と保護者の不安が少しでも軽くなるようにまとめていきます。
ホームステイでなぜトラブルが起きるのか、まずは前提を整理する

ホームステイは、単なる海外滞在ではなく家庭に入る経験です。これが魅力でもありますが、同時にトラブルの種にもなります。文化・生活習慣・家族観・距離感など、日本とは違う前提の上に成り立つ生活が始まるため、最初の数日はどうしても戸惑いやすいものです。
そして多くのトラブルは、相手が悪いのではなく、双方の当たり前のずれから生まれます。このずれが理解できると、トラブルを過度に恐れず、冷静に対処できるようになります。
文化や価値観の差が生むすれ違い
ホームステイ先では、文化の違いが生活の細かい部分に表れます。
たとえば、食事の時間、食材の使い方、シャワーの使い方、家の中での靴の扱い、家族同士の距離感など、日本では意識しないような小さなポイントが重なり、ストレスにつながることがあります。
特に言いにくい違和感ほど溜まりやすく、遠慮してしまうと小さなすれ違いが大きく膨らむこともあります。文化の違いを前提に、「違って当たり前」と考える視点があるだけで、受け取り方がかなり変わります。
学生側が戸惑いやすいポイント
ホームステイは、毎日が新しい環境との接点になります。学生が戸惑いやすいのは、
・ホスト家族の距離感
・生活のリズム
・学校と家のコミュニケーションスタイル
といった部分です。
たとえば、相手が丁寧にゆっくり話してくれているのに「冷たくされている気がする」と感じてしまったり、逆に距離が近い家庭だと「どこまで踏み込んでいいのか分からない」と迷うこともあります。
最初はどうしても緊張しやすいので、「うまく馴染めないのは自分だけかも」と思わなくて大丈夫です。ほとんどの学生が同じ道を通ります。
ホスト側にも事情があるという視点
ホームステイは受け入れる側の生活の上に成り立っています。
ホスト先にも、仕事・家事・子育てなど日常のリズムがあり、留学生を迎えながらそれを維持しています。ホスト側の忙しさや疲れによって、コミュニケーションが十分に取れない日があるのは自然なことです。
これは学生の受け入れに冷たいという意味ではなく、家庭としての事情があるだけです。ホスト側も最初は留学生に気をつかっていますし、慣れるまでの時間が必要になるのはお互い同じです。
ホームステイで特に多い5つのトラブルを具体的に見ていく

ホームステイで起きるトラブルは、決して特別なケースではありません。むしろ、どれもよくある場面の中で起こるものばかりです。最初は誰でも緊張していますし、相手の生活リズムや家族の雰囲気を理解するには時間が必要です。
そのため、トラブルが起きた=失敗というわけではなく、むしろ「海外生活に慣れるためのステップ」と考えたほうがしっくりきます。ここでは、多くの学生が実際に直面しやすい5つのトラブルを取り上げ、それぞれの背景となぜ起きやすいのかについてまとめていきます。
食事・生活習慣が合わない
最も多いのが、食事に関する戸惑いです。
朝食がシリアルだけの日が続いたり、油の多い料理が続いたり、日本ではあまり見ない香辛料の強い料理が出てきたりと、食の違いは生活に直結します。
学生側が「申し訳なくて言えない」と感じる一方で、ホスト側も「大丈夫そうだったから続けてしまった」と思っているケースが少なくありません。
食事は文化が強く反映される部分なので、合わないのは自然なことだと捉えておくと気持ちが楽になります。
生活習慣の違いも同じで、シャワーの時間、洗濯の頻度、部屋の片付け方など、家庭ごとにルールが違います。日本と同じ感覚でいると誤解が生まれやすいので、初日に軽く確認できるとトラブルはぐっと減ります。
ハウスルールの誤解
ホームステイには必ず家ごとのハウスルールがあります。
・シャワーは何分以内
・冷蔵庫の使い方
・友達を家に呼んでいいか
・門限
こういったルールが曖昧なまま生活を始めてしまうと、悪気がなくてもルール違反のように見えてしまうことがあります。
ホスト側は「伝えたつもり」、学生側は「聞いていないつもり」。
このすれ違いで気まずくなるケースがとても多いです。
最初の1〜2日は情報が多くて混乱しやすいので、「ちょっとだけメモしてもいいですか?」と聞いて確認しておくと安心できます。
ホストとの距離感がつかめない
ホストファミリーにもタイプがあります。
家族の輪に積極的に入れてくれる家庭もあれば、プライバシーを大切にして必要以上に距離を詰めない家庭もあります。どちらが良い・悪いではなく、文化としてそういう家族観があるだけです。
ただ、学生からすると、この距離感のつかみ方がとても難しく、
・話しかけるタイミングが分からない
・孤立してしまった気がする
・歓迎されていない気がする
と感じることがあります。
実際には、ホスト側も留学生への接し方を探っている時期で、お互いに様子を見ている状態。時間とともに関係が落ち着いてくることがほとんどです。
言語ストレスによるコミュニケーションの停滞
ホームステイは常に英語環境なので、慣れない間は脳が疲れやすく、言語ストレスが大きくなります。
最初は簡単な会話でも「聞き返して申し訳ない」「理解できなかったらどうしよう」とプレッシャーを感じやすく、それが会話の減少につながることがあります。
学生が黙りがちになると、ホスト側も「疲れているのかな」と遠慮して距離を取ってしまい、さらに会話が減ってしまう悪循環に入りやすいです。
これは語学力の問題ではなく、慣れの問題です。ほとんどの学生が同じ流れを経験します。
部屋・設備・環境のギャップ
ホームステイ先の部屋は、ホテルのような整った環境ではありません。
家具が古い、暖房が弱い、部屋が狭い、Wi-Fiが不安定、といった環境のギャップは意外と多いです。
日本の生活水準が世界的に高いこともあり、環境の違いに驚く学生もいますが、ホスト側に悪意があるわけではなく普通の生活のリアルさが出ているだけのケースがほとんどです。
とはいえ、Wi-Fiが使えない、寝具が著しく不十分など、生活に支障がある場合はコーディネーターに相談することで改善されることが多いです。
実際に起きたトラブルの解決例から学べるポイント

トラブルという言葉だけを聞くと不安が大きくなってしまいますが、実際には解決できなかったケースのほうが少ないと言われています。多くの学生が何かしらの壁にぶつかりますが、それを乗り越えた経験がホームステイの一番の財産になった、という声も少なくありません。
ここでは、実際によくある状況をもとに「どう改善されたか」をまとめました。背景やプロセスを見ると、トラブルは避けるものというより対処できるものという感覚に変わっていきます。
事前に伝えることで防げたケース
一番多いのが、「もっと早く言ってくれていたら違ったのに」というタイプのすれ違いです。
たとえば、食事が合わずお腹が空いたまま過ごしていた学生が、数日後に勇気を出してホストに伝えたところ、
・別メニューを用意してくれた
・買い置きのスナックやフルーツを自由に食べて良くなった
・自分で簡単に作っていいことになった
というように、すぐ改善されたというケースがあります。
ホスト側からすると「全部食べていたから大丈夫だと思った」という理由が多く、遠慮の誤解が積み重なっていた、という背景がよく見られます。
言い方としては、「もしできれば」で始めると柔らかく伝わりやすく、学生もホストも気持ちよく歩み寄れることが多いです。
現地コーディネーターの介入で解決したケース
ホームステイには、学生とホストの間に入ってくれるコーディネーターがいます。
学生が直接言いにくいこと、ホストに誤解されそうなことは、このコーディネーターが調整することでスムーズに解決することがよくあります。
たとえば、
・部屋が寒すぎて眠れない
・シャワーの使用時間が極端に短い
・ホストの生活が忙しすぎて交流がほとんどない
といった相談が寄せられたとき、コーディネーターが
「こういう事情があるらしいですが、お互いにこうしてみませんか」
と提案することで、一気に解決するケースが多いです。
特に、家庭ごとの価値観が大きく違う場合は、第三者の調整がとても効果があります。
学生が遠慮しがちな部分を自分の代わりに伝えてくれるため、安心して相談できる存在です。
留学生自身の気づきで改善したケース
トラブルの中には、慣れや相手の立場を理解することで自然と解消されるものもあります。
たとえば、ホストがそっけなく感じていた学生が、ある日「相手は自分の英語に合わせてゆっくり話そうとしてくれていた」ことに気づいた、というケースがあります。
この気づきがきっかけで、学生が安心し、ホストとの会話が増えていきます。
また、最初は言語疲れで黙りがちだった学生が、
・1日10分だけ雑談してみる
・学校で覚えたフレーズを家で使ってみる
など、小さな行動を積み重ねた結果、距離がぐっと縮まった例もあります。
ホームステイは、最初の数日や数週間の印象で結論を出さないほうがうまくいきやすいものです。多くの学生が少しずつ慣れていく過程を通るため、焦らなくて大丈夫です。
安心してホームステイに行くためのまとめと次のステップ

ホームステイは、慣れない環境に飛び込む経験だからこそ、良い面と戸惑う面が両方あります。
そして、トラブルと聞くと怖く感じてしまうこともあるかもしれませんが、多くの学生は何か小さな壁にぶつかりながらも、その壁を乗り越えた経験が自信になったと話します。
完璧に準備しようとする必要はありませんが、「違いがあって当たり前」「困ったら頼っていい」という二つを知っておくだけで、滞在はずっと楽になります。
最初の数日は不安や緊張があって当然です。それでも日が経つほど慣れていき、ホストとの距離も少しずつ縮まります。学生が安心して挑戦できるように、保護者も必要なときだけそっと支える。そんなバランスが心強い味方になります。
不安がゼロになることはありませんが、その不安を抱えたままでも一歩踏み出せる準備はできます。
このページの内容が、その一歩を少しだけ軽くする手助けになれば嬉しいです。




