英検1級と準1級の違いは?難易度・求められる力・合格率を徹底比較

基礎知識
こんな人向けの記事です
  • 準1級と1級ってどれくらい差があるんだろう
  • 自分の今の力でどちらに挑戦すべきか迷っている

「語彙の量を見ただけで気持ちが引いてしまう」「合格率を見ると不安ばかりが増えて前に進めない」
英検準1級や1級を意識し始めると、こんな気持ちが重なって、最初の一歩が踏み出しにくくなることがあります。数字で見ても差が大きく、どちらが自分に合っているのかやどう対策すればいいのかを判断しづらいのは自然なことです。

ただ、準1級と1級の「差」は、感覚ではなく構造で理解できます。語彙量、長文テーマ、求められる論理性、合格率。それぞれの特徴を落ち着いて言語化していくと、どこに壁があり、どこに伸びしろがあるのかがはっきり見えてきます。
この記事では、迷いやすいポイントを少しずつ整理し、準1級と1級の距離を自分の中でつかめるようにしていきます。

英検1級と準1級はどれくらい違う?

英検準1級と1級の差は、段差ではなく段違いと言われることがあります。ただ、それは「手が届かない」という意味ではなく、壁の質が変わるというニュアンスに近いものです。準1級までは語彙と長文の量を積み重ねていけば突破できますが、1級では語彙の質、背景知識、論理性など、より深い力が求められます。

一方で、この差を正しく理解すれば、対策の順番が見えるようになり、学習の負担が一気に軽くなります。準1級の延長線上にある部分と、全く新しいアプローチが必要になる部分。その二つを見分けることが、迷いを減らす大きな鍵になります。

ここからは、準1級と1級の「違い」をまず3つに分けて整理していきます。

語彙数の違い(準1級7000語/1級9000〜12000語)

準1級で求められる語彙数は概ね7000語前後。それに対して、1級は9000〜12000語と言われています。単純に数字だけを見ても大きな差ですが、重要なのは数そのものではなく、語彙の質です。

準1級の語彙は日常から少し専門寄りに広がった範囲で、文脈の助けを借りれば理解できるものが多いです。一方、1級で出題される語彙は抽象語や学術語が多く、文脈に頼っても意味を推測しづらいものが増えます。

さらに、語彙がテーマと結びついて出題されるため、背景知識も理解を支える大きなポイントになります。語彙の質が変わることで、わからないことでも負荷の種類が変わってくるのが1級の特徴です。

長文で扱われるテーマの深さの違い

準1級の長文では、教育、環境、テクノロジー、文化など比較的広く触れたことのあるテーマが多いです。文章量は多いものの、構造は素直で、読み進めるうちに内容がつかめてくることが多いはずです。

対して1級の長文は、心理学、社会構造、政治、経済、倫理問題など、抽象度の高いテーマが多く、背景知識の差が理解の差に直結します。同じ700語でも、負荷のかかり方が全く違います。
ただ、構造そのものは論理的で、慣れていくと内容の流れをつかみやすくなります。最初は壁が高く見えても、経験を積むことで読めるようになる分野でもあります。

英作文と面接に求められる思考の差

準1級の英作文は120語前後で、意見・理由・例の流れを整えれば書ける構造になっています。トピックも比較的馴染みのあるものが並ぶため、準1級は型を覚えることで安定した点が取りやすいです。

一方で、1級では抽象的なテーマや社会問題が扱われ、意見を組み立てる段階で思考の深さが求められます。理由の質や論理性が評価に直結し、反論への触れ方など、より高度な構成力が必要になってきます。

面接でも同じで、準1級は「英語を使って意見を述べる」段階ですが、1級は「英語を使って論理的に議論する」段階へ進みます。

難易度の差はどれくらい?

英検準1級と1級の難しさは「とにかく1級のほうが大変」という曖昧な表現で語られることが多いのですが、実際には数字で整理すると理解しやすくなります。特に学生の場合、自分の現在地と合格までの距離が見えにくく、「なんとなく無理そう」に飲まれてしまいがちです。曖昧な不安を大きくしないためにも、スコアや合格率など、目に見える指標で距離感をつかむことが大切です。

準1級と1級の差は、語彙量だけでなく「どれだけ点が取りやすいか」「どれくらい落としていいか」の感覚にも大きく関わってきます。ここでは、一次試験のスコア、合格率、受験者層の3つを軸に、整理していきます。

一次試験スコアの傾向と合格ラインの比較

英検準1級と1級の一次試験は、どちらも大きく
・リーディング
・リスニング
・ライティング(英作文)
の3技能で構成されていますが、求められる点数の「取り方」が違います。

準1級の一次試験合格ラインは、およそ65パーセント前後。
1級も同じく65パーセント前後と言われています。

数字だけ見れば同じなのに、なぜこんなに難易度が違うのか。
それは、配点に対する問題の負荷がまったく違うからです。

準1級は、読めば理解できる文章が中心で、語彙さえ補えばリズムよく読み進められます。対して1級は、読めても背景知識が足りずに「理解が追いつかない」という状況が起こりやすく、得点が安定しにくい構造になっています。

また、英作文の重さも大きく違います。準1級の英作文は型を覚えると得点が安定しますが、1級は主張・理由・反論処理など論理的な深さが求められるため、60パーセントを超えるのが簡単ではありません。

同じ合格ラインでも、たどり着くまでの負荷が大きく違う。
これが数字では見えにくい、準1級と1級の大きな距離です。

合格率の違い(準1級12%前後/1級10%弱)

英検の公式データを見ると、合格率には明確な差があります。

・準1級の一次試験合格率はおよそ12%前後
・1級の一次試験合格率は10%弱

どちらも高くはありませんが、この数字の「差」よりも大事なのは、受験者層の違いです。

準1級の受験者は、大学生・社会人・英語が得意な高校生など幅広いです。
一方で1級の受験者は、帰国子女、留学経験者、職場で英語を使う社会人など、英語のバックグラウンドがある人が増えます。

つまり、同じ10%でも、競争する母集団のレベルが違うため、実質的な難易度は数字以上のものがあります。

学生の場合は、語彙と背景知識でどうしても差がつきやすいため、合格率の数字だけで判断せずに、「どのレベルの人が受けているのか」を見ることが大切です。

受験者層の違いが難易度に与える影響

準1級と1級の差を理解するうえで、受験者層の違いは避けて通れません。

準1級は、大学受験対策や資格取得を目的とした学生が多く、学習の方向性がある程度そろっています。一方で1級は、すでに英語を仕事で使っていたり、海外経験がある受験者が一定数いるため、スタート地点の幅が極端に広い試験です。

その結果、学生にとっては
・準1級は努力で届く試験
・1級は努力の方向まで問われる試験
という印象の違いが生まれます。

長文の読み方、語彙の覚え方、英作文の型だけでは戦えない背景知識の差が、1級では得点に直結します。

一方で、方向さえ整えれば、学生でも確実に近づける試験でもあります。競争相手が強いからこそ、戦略の精度が合格に大きく影響してくるのが1級の特徴です。

求められる力の違いを具体的に分解してみる

準1級と1級の違いを語彙量や合格率だけで説明すると、どうしても「1級のほうが大変」というざっくりとした理解に落ちついてしまいます。けれど実際には、両者の差はもっと質に寄った部分であらわれます。語彙の質、読解を支える背景知識、そして英作文や面接で必要とされる論理性。これらを分解していくことで、自分がどの段階にいて、どこから力を伸ばすべきかが自然と見えてきます。

特に学生の場合、語彙の量よりも「語彙の広がり方」や「文章の抽象度への耐性」が大きなポイントになります。ここでは、準1級と1級で決定的に違う力を3つ取りあげていきます。

語彙の質(抽象語・学術語)の違い

語彙数の差がよく語られますが、実際に学習者の負荷を大きく左右するのは語彙の質です。

準1級までは、環境や教育、文化など、ある程度日常に近いテーマが中心で、文脈から意味を推測しやすい語が多いです。一方で1級では、抽象度が高く、分野に特化した語彙が増えてきます。たとえば心理学、社会学、政治学、倫理学など、専門領域との結びつきが強い単語が連続して登場します。

具体的には、準1級が意味を知っていれば読める語が多いのに対し、1級では概念を理解していないと読めない語が増えるイメージです。この違いが、読解の負荷を大きく変えます。

語彙の質が変わることで、文章全体の理解に与える影響は大きく、途中で読み進められなくなるケースも出てきます。ただ、テーマがある程度決まっているため、分野ごとに語彙を固めると理解しやすくなる特徴もあります。

読解速度と背景知識量の必要度

準1級と1級の長文の最大の違いは、文章の抽象度と背景知識の量です。

準1級の長文でも難しいものはありますが、文章の構造は素直で、主張と根拠の関係が比較的わかりやすく書かれています。テーマについての基本的な知識がなくても、読み進めるうちにある程度つかめることが多いです。

しかし1級の長文は、テーマそのものが抽象的で、複数の視点が交差するような内容が増えます。政治や心理、テクノロジーの倫理問題、文化比較など、文章を読む前に「背景知識があるかどうか」で理解度に大きな差が出ます。

読解速度も重要で、抽象度の高い文章を一定のスピードで読み続ける負荷は、準1級とは比べものになりません。一つ一つの文はそれほど複雑でなくても、内容の密度が高いため、読みながら考える時間が必要になります。

ただ、最初は少し重く感じても、読んだ量に比例して慣れが積み重なっていくのが1級の長文です。背景知識と語彙が広がるほど、一気に読みやすくなるタイミングが訪れます。

英作文・二次面接で求められる論理性の差

準1級の英作文は「主張→理由→例」の流れが基本で、この構造を覚えると安定した点数につながります。テーマも教育、テクノロジー、環境など比較的馴染みのあるものが多く、意見の出しやすさがあります。

ですが、1級の英作文になると、まずテーマの抽象度が一段上がります。社会制度の持続可能性、個人の自由と責任、テクノロジーが社会に与える倫理的影響など、そもそも意見を作る段階から時間がかかるトピックが増えます。

さらに、1級では「反論への言及」や「論理展開の深さ」など、文章の質が採点に直結します。語数も増えるため、主張をただ述べるだけでは点が伸びにくく、理由の説得力や例の妥当性が問われます。

二次面接も同様で、準1級は意見を英語で表現できれば一定レベルに到達できますが、1級は議論の土台を作り、相手の質問に対して論理的に返す力が求められます。

ここが、学生にとって最初に難しさの質を感じるポイントでもあります。

英検1級と準1級の違いに関するよくある質問

準1級と1級の差を理解していくと、どうしても気になる疑問がいくつか出てきます。特に学生の場合、自分の現在地をどう判断し、どちらに進むべきかを決めるのが難しい時期だと思います。ここでは、迷う人が多い質問に答えていきます。

準1級と1級、どちらから受けるべき?

一般的には、準1級を受けてから1級へ進む流れがもっとも現実的です。準1級の語彙・長文のレベルは、1級への助走としてちょうど良く、学習の負担が急激に重くなるのを避けられます。

ただ、英語の読解力が高かったり、語彙がしっかり積み上がっていたりする学生であれば、準1級を経ずにいきなり1級へ挑戦するケースもあります。判断の基準としては、
・準1級の長文が7割ほど読める
・語彙が6000語以上
・英作文で100語は苦労せず書ける
といった点が目安になります。

無理に近道を選ぶより、自分がどこでつまずきやすいかを把握したうえで次の級を選ぶほうが、長期的には確実です。

学生でも1級は現実的なのか?

結論として「十分に現実的」です。ただし、準1級とは比べものにならないほど時間と積み上げが必要になります。

学生が1級に合格している例は珍しくありませんが、共通しているのは
・語彙に時間をかけていること
・長文に触れる量が多いこと
・英作文を早い段階で練習していること
の三つです。

帰国子女でなくても、コツコツ積み上げれば1級は狙えます。むしろ、時間を確保しやすい学生の時期は、1級に挑戦しやすいタイミングでもあります。

どれくらい勉強すれば準1級→1級へ進める?

目安としては、準1級に合格した状態から
・最短で半年
・一般的には1年前後
がよく見られるペースです。

特に語彙の積み上げに時間がかかるため、短期集中よりも長いスパンで学習を続けたほうが負担が少なく、理解も安定します。

準1級までは「覚えればできる」部分が多いですが、1級は「理解しながら覚える」段階に入ります。読んで、聞いて、考えて、書く。この積み重ねを続けることで、少しずつ1級の世界が読みやすくなっていきます。

自分はどちらを受けるべきか。今日から判断できる基準

準1級と1級の差を知ったうえで、それでも「どちらから受けるのがいいだろう」と迷うことはよくあります。迷いが生まれるのは、自分の現在地と試験レベルの距離がまだぼんやりしているからです。ここでは、今日から判断できる小さな基準をまとめています。

語彙・読解・英作文のチェック項目

まずは語彙。
準1級の語彙が7割ほどわかる状態なら準1級に挑戦する段階です。
1級の語彙が3割ほど推測できるなら、1級を視野に入れても良い頃です。

長文は、準1級の過去問を読んで「何が書いてあるかはつかめる」なら準1級が適正。
1級の長文を読んで「語彙は難しいが流れはつかめる」なら、1級の対策を始めても無理はありません。

英作文は、準1級の型で100語を書けるかどうかが大きな判断材料になります。

準1級向き/1級向きの特徴

準1級向きの人は、
・まず語彙が足りていない
・長文がまだ負担に感じる
・英作文の構成力が不安
といったケースが多いです。

1級向きの人は、
・長文の構造を追う力がすでにある
・抽象的な内容でも読み進められる
・英作文がそれなりに書ける
という特徴があります。

もちろんどちらに当てはまっても、徐々に力は伸ばせます。

迷った時の決め方と最初の一歩

迷った時は、まず過去問を軽く触れてみるのが一番確実です。
解ける必要はなく、
・どこが分からないか
・何が足りていないか
を知ることが目的です。

準1級と1級の差は、知れば知るほど“越える方法が分かる”差でもあります。
そして、最初の一歩は大きな歩幅でなくても大丈夫です。

今日できるのは
・語彙を10語だけ覚える
・長文1つのテーマだけ眺めてみる
・英作文の構成だけ真似してみる
この程度で十分です。小さな積み重ねが、半年後の土台を確実に作ります。