子どもをインターナショナルスクールに入れたいと考えたとき、真っ先に浮かぶのが「授業は全部英語で行われるけれど、うちの子はついていけるだろうか」という不安です。特に小学校低学年や、日本の幼稚園からそのまま進学するケースでは、英語に触れた経験が少ない子どもも多くいます。その場合、学校生活で孤立しないか、授業を理解できるのかと心配になるのは当然のことです。
こうした親御さんの不安に応える仕組みが「ESLクラス」です。ESLとは「English as a Second Language」の略で、ひとことで言うと「英語を母語としない子どもが、通常の授業に参加できるようになるまでのサポートを受けられる特別プログラム」です。日本語を母語とする子どもに限らず、フランス語や中国語、韓国語など、英語が第一言語ではない子どもが安心して学べるよう支援します。
インターナショナルスクールに通う生徒の背景は多様です。全員が英語を完璧に使いこなせるわけではなく、むしろ「英語はこれから学んでいく」という子どもも少なくありません。だからこそESLクラスの存在は欠かせず、インターナショナルスクールの教育を支える基盤とも言えます。本記事ではESLクラスの役割や授業内容、そこで育まれる力を丁寧に解説し、親御さんが安心して判断できるよう情報を整理しました。
ESLクラスの基本とは??

インターナショナルスクールにおけるESLクラスは、単なる英語学習の時間ではなく「子どもが学習と生活にスムーズに適応するための橋渡し」としての役割を担っています。学校ごとに内容や仕組みは異なりますが、根本には「子どもの安心と成長を支える」という共通した目的があります。
ESLの目的
ESLの第一の目的は、子どもが通常クラスで授業に参加できる力をつけることです。単語や文法を覚えること自体がゴールではなく、「授業で先生の指示を理解できる」「友達に自分の気持ちを伝えられる」といった実生活に直結する英語力を育むことが重視されます。
また、学習面だけでなく心理的な安心も大切にされています。言葉が分からない状態で学級に参加すると、子どもは不安や孤独を感じやすくなります。ESLは「自分も理解できている」という感覚を持たせ、前向きに学習に取り組める土台を作る役割も果たしているのです。
授業のスタイル
ESLの授業は少人数制が基本です。5〜10人程度で構成されることが多く、教師は一人ひとりのレベルを把握し、必要に応じてペースを調整します。授業形態には主に二つあります。
- プルアウト型:通常のクラスから一部の時間を抜け、ESLに参加する形式。英語初心者が集中して学べる。
- プッシュイン型:通常のクラスにESL教師が入り込み、子どもをサポートする形式。学習の流れを中断せずに支援できる。
どちらが採用されるかは学校の方針や子どもの英語力によって異なりますが、柔軟に組み合わせるケースも多く見られます。
英語初心者への配慮
英語を全く話せない状態で入学する子どもも少なくありません。そのためESLでは、難しい専門用語ではなく身近なフレーズから教えたり、視覚教材やイラストを多用して「理解できた」という感覚を持たせます。同じ境遇の子ども同士が集まることで「自分だけできない」という不安を和らげ、仲間意識を持って学べるのも大きな特徴です。
ESLで学ぶ内容とは?

ESLで扱われる内容は、単なる英会話練習にとどまらず、学校生活や学習全般に必要なスキルを広くカバーしています。
基礎英語力の強化
まずは英語の基礎を固めます。アルファベットの発音、簡単なあいさつ、日常生活で頻繁に使う表現などから始めるため、初心者でも安心して参加できます。「Can I play with you?(一緒に遊んでもいい?)」のように、生活に直結する表現を学ぶことで友達とのやり取りがスムーズになり、学校生活が一気に楽しくなります。
学習に必要な英語
インターナショナルスクールでは算数や理科、社会も英語で教えられます。そのため「multiply(掛け算)」「observe(観察する)」など、教科に必要な用語をESLで先取りして学ぶことが多いです。これにより、通常の授業でも「聞いたことがある」と感じやすくなり、理解が深まりやすくなります。
表現力と発表の練習
インターナショナルスクールではプレゼンテーションやディスカッションの機会が多くあります。ESLではその準備段階として、自分の意見を文章にまとめたり、簡単に発表したりする練習を行います。たとえ短い文でも、自分の考えを表現する経験を重ねることで、英語への自信がついていきます。
ESLが育む力とメリットとは?

ESLの効果は単なる語学力の習得にとどまりません。子どもが安心して学べるようになることで、さまざまな力が自然に育まれていきます。
英語への自信を持つ
最初は分からなくても、少しずつ「通じた」「理解できた」という経験を積むことで「自分はできる」という自信につながります。この小さな成功体験の積み重ねが、子どもを学びに前向きにさせてくれます。
学習への積極性
通常クラスで分からない部分があっても「後でESLで確認できる」と思える安心感があるため、子どもは挑戦を恐れなくなります。分からないから黙ってしまうのではなく「とりあえずやってみよう」と思える積極性が養われるのです。
異文化理解と仲間意識
ESLクラスには英語を第二言語とする多国籍の子どもたちが集まります。お互いに励まし合うことで「一緒に頑張ろう」という仲間意識が生まれ、異文化を理解する姿勢も自然と育ちます。これは、単なる英語力を超えて「国際的な感覚」を養う貴重な体験になります。
親が理解しておきたいESLのポイント3選!

ESLは心強い制度ですが、親御さんとして知っておくべき注意点もあります。
期間は子どもによって異なる
ESLにどのくらい在籍するかは、子どもの成長スピードや英語への慣れ方によって異なります。数か月で卒業できる子もいれば、数年かけて徐々にステップアップする子もいます。大切なのは「早く通常クラスに戻すこと」ではなく「子どもの安心と成長に合わせること」です。
学校ごとの体制の違い
ESLの仕組みは学校によって大きく異なります。プルアウト型が中心の学校もあれば、プッシュイン型を重視する学校もあります。サポートの時間数や教師の専門性、教材の種類も違うため、入学前に必ず確認しておくことが大切です。
家庭でのサポート
学校に任せきりにするのではなく、家庭でも英語に触れる機会を少しずつ取り入れると効果が高まります。絵本を一緒に読む、英語の歌を楽しむなど、小さな工夫で子どもの安心感は大きく変わります。親子で「できたね」と喜び合うことで学びがポジティブに定着します。
まとめ

インターナショナルスクールで導入されているESLクラスは、英語初心者の子どもにとって大きな安心材料です。基礎英語から学習に必要な語彙、発表練習まで幅広くサポートし、子どもが学校生活に適応できるよう支えています。
さらにESLは、英語力だけでなく自信、積極性、異文化理解といった人生を通じて役立つ力を育みます。インターナショナルスクールを検討する際には、授業内容や学費だけでなく「ESLクラスの有無や体制」にも注目することが、安心した学校選びにつながるはずです。